目的によってこんなにも違う超音波の力|治療と評価で役立つ6つの基礎知識

ブログ監修者

プランナー

棚橋 和宏
(たなはし かずひろ)

【保有資格:医療経営士3級】

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超音波は「治療用」と「画像診断用」でまったく目的が違う

超音波という言葉は一つでも、実際には「治療用」と「画像診断用」で役割が大きく異なります。接骨院・鍼灸院でよく使われるのは、筋や腱にエネルギーを与える超音波治療器と、体の中の状態を描き出す超音波画像診断装置です。同じ音波を使いながら、片方は「治すための超音波」、もう片方は「見るための超音波」というまったく違う目的を持っています。まずはこの前提を整理しておくことが、「目的によってこんなにも違う超音波の力」を理解する第一歩と言えるでしょう。

治療用超音波の目的とは

治療用超音波の一番のねらいは、筋肉や腱、靭帯などの組織に細かな振動エネルギーを与え、回復しやすい環境を整えることです。音の振動によって組織の中で摩擦が生まれ、血流が高まりやすくなり、こわばった筋がゆるみやすい状態になります。捻挫や肉離れの回復期、関節の動きに制限が出ているケースなどでは、手技だけでは届きにくい深い部分にまでアプローチできる点が大きな強みです。つまり、治療用超音波は「中から整えるための道具」と考えるとイメージしやすいはずです。

画像診断用超音波の目的とは

一方で、画像診断用の超音波は、体の中の状態をリアルタイムで映し出すことを目的にしています。超音波を体内に送り込み、その跳ね返り方から画像を作り出すことで、筋肉や腱、靭帯、関節周囲の組織がどのような状態にあるのかを画面上で確認できます。レントゲンのように骨だけを見るのではなく、軟部組織の腫れや断裂の有無、動かしたときの滑り方なども把握しやすくなります。このように、診断用の超音波は「状態を見極めるための目」の役割を担っていると言えるでしょう。

2つの目的の違いを理解するメリット

治療用と画像診断用の超音波は、同じ機器に見えたとしても、目的も使い方もまったく別です。この違いを整理しておくと、施術の流れを組み立てやすくなります。たとえば、まずエコーで状態を確認し、そのうえで治療用超音波を使うというように、評価と介入を明確に分けられます。患者さんへの説明も、「今は状態を確認するための超音波です」「ここからは治療用の超音波で回復を後押しします」と伝えやすくなり、安心感や納得感が高まりやすくなります。結果として、施術への信頼や通院の継続にも良い影響を与えるでしょう。
術者は違いを分かっていても、その違いを患者さんが理解しているかが重要です。

超音波治療器の特徴|温熱効果と微細振動による治癒サポート

超音波治療器は、目には見えない音の振動を利用して、組織の深い部分に働きかける治療機器です。接骨院・鍼灸院では、手技や低周波では届きにくい場所へアプローチしたいときに頼りになる存在と言えます。とくに、慢性的な筋のこわばりや、スポーツ障害の回復期、関節周囲のつっぱり感が残っているケースなどで、その効果を発揮しやすくなります。

周波数によって変わる作用の深さ

治療用超音波では、一般的に1メガヘルツと3メガヘルツという二つの周波数がよく使われます。1メガヘルツは波長が長く、深い場所に届きやすいため、大きな筋肉や関節の奥のこわばりに向いています。反対に、3メガヘルツは浅い層に作用しやすく、表層の腱や小さな筋など、比較的浅い場所のトラブルに適しています。周波数の違いを理解して選び分けることで、狙いたい組織に無駄なくエネルギーを届けることができるでしょう。

温熱モードと非温熱モードの違い

超音波治療器には、大きく分けて温熱モードと非温熱モードがあります。温熱モードでは、組織の中で摩擦熱が生まれやすくなり、血流が増え、筋肉や腱の柔軟性が高まりやすい状態になります。関節の動きが固くなっているケースや、長く続くこわばりには、この温熱がプラスに働きます。一方で、炎症がまだ残っているような時期には、温めすぎると負担になることがあります。そのような場面では、あえて温度上昇を抑えた非温熱モードを使い、微細な振動で組織の反応を引き出していく方法が選ばれます。このように、症状のステージに応じてモードを切り替えられる点が、超音波治療器の大きなメリットです。

筋・腱・靭帯などに期待できる治療効果

治療用超音波は、筋肉だけでなく、腱や靭帯にも幅広く使われます。血流が乏しく治りにくい場所に振動エネルギーを届けることで、組織の回復を後押しする効果が期待できます。スポーツで傷めやすいアキレス腱や膝周囲、肩の腱板などにも利用されることが多く、手技と組み合わせることで、よりスムーズな動きを引き出しやすくなります。筋肉についても、深部の張りが取れにくいときに超音波を先に行うことで、その後のストレッチや手技が入りやすくなるという利点があります。このように、治療用超音波は「治癒を後押しするサポート役」として、日々の施術に取り入れやすい存在です。

超音波画像診断装置(エコー)の特徴|安全でリアルタイムな観察が可能

超音波画像診断装置、いわゆるエコーは、体の内部をリアルタイムで観察できる評価機器です。放射線を使わないため安全性が高く、何度検査しても身体への負担が小さい点が大きな特徴と言えます。接骨院・鍼灸院でも、筋肉や腱、靭帯、関節周囲の状態を確認しながら施術方針を決めたいときに、とても役立つツールになっています。

組織の状態をリアルタイムで可視化できる理由

エコーは、超音波を体内に送り込み、その反射を拾い上げて画像に変換しています。異なる組織はそれぞれ反射の仕方が違うため、その差を利用して陰影や形として画面に映し出すことができます。筋肉がどの方向に走っているのか、腱がきちんと滑っているのか、靭帯に腫れや断裂がないかなどを、その場で確認できるのが大きな強みです。静止した状態だけでなく、実際に動かしながら観察できるため、「どの動きで痛みが出るのか」を具体的な画像として捉えられます。

画像診断で使用する周波数の特徴

エコーで使われる超音波は、治療用と比べて周波数が高いという特徴があります。高い周波数を使うことで、細かな組織の境目や小さな変化も映し出しやすくなりますが、その分だけ深くまでは届きにくくなります。そのため、目的とする部位に合わせてプローブや設定が選ばれています。浅い場所を詳しく見たい場合にはより高い周波数を、やや深い場所を確認したい場合には少し低めの周波数を使うといった具合です。この調整により、診たい部位をできるだけ鮮明に映す工夫がされています。

接骨院・鍼灸院で広がるエコー活用のメリット

エコーを取り入れることで、施術前後の評価が一段と具体的になります。痛みの原因がどの組織にあるのかを画像として把握できるため、施術方針を患者さんと共有しやすくなります。また、経過を記録しておけば、回復の過程を後から振り返ることも可能です。言葉だけでは伝わりにくかった内容も、「ここが腫れていましたが、今はここまで落ち着いています」と画像で示せるため、患者さんの納得感も高まりやすいでしょう。施術者にとっても根拠を持って説明できる安心感が生まれます。

目的別に変わる超音波の仕様|周波数・出力方式・適応が異なる

同じ超音波でも、治療用と診断用では、周波数や出力の仕方、適応となる場面が変わってきます。これは、求めている役割が違うからです。治療では組織にエネルギーを届けることが重要であり、診断では細かい構造を映すことが求められます。この章では、その違いを仕様という視点から整理していきます。

治療用は「1MHz・3MHz」、診断用は「5〜12MHz以上」が中心

治療用超音波でよく使われるのは、1メガヘルツと3メガヘルツです。先ほど触れたように、1メガヘルツは深部への到達性が高く、3メガヘルツは浅い層に集中して作用します。これに対し、診断用のエコーでは、5メガヘルツから12メガヘルツ以上の高い周波数が中心となります。治療用は「届かせるための超音波」、診断用は「見極めるための超音波」として設計されているわけです。

パルスか連続波かで変わるアプローチ

治療用超音波では、連続的に出力する連続波と、一定の間隔でオンオフを繰り返すパルス波が選べることがあります。連続波は温熱効果が出やすく、慢性的なこわばりや動かしにくさに適しています。一方、パルス波は平均的なエネルギー量を抑えながら振動刺激を届けることができるため、炎症の名残がある場面などでも使いやすくなります。診断用のエコーでは、画像を滑らかに映すために、短いパルスを高速で発信し続ける仕組みが用いられています。このように、同じ超音波でも出力の仕方が変わることで、役割が大きく分かれているのです。

施術と評価を分けて考える重要性

仕様の違いを理解すると、設定や機能を意識しながら機器を扱えるようになります。施術と評価をしっかり分けて考えることで、一本の筋が通った施術計画を立てやすくなります。まずエコーで評価を行い、その結果に基づいて治療用超音波や手技、運動療法を組み合わせるという流れを意識すると、施術の根拠が明確になります。結果として、患者さんにも「なぜこの機器を使うのか」をわかりやすく説明できるようになり、信頼関係の構築にもつながるでしょう。

まとめ|治療と診断の違いを理解すると施術の幅が広がる

ここまで見てきたように、超音波には治療用と診断用という二つの顔があります。同じ音波を使っているものの、その目的も仕様も大きく異なります。治療用は組織にエネルギーを届け、回復を後押しするための道具であり、診断用のエコーは体内の状態を把握し、施術方針を決めるための目の役割を果たします。「目的によってこんなにも違う超音波の力」を理解しておくことで、接骨院・鍼灸院での施術は、より狙いを定めたものになっていくでしょう。

目的に応じた使い分けができるようになる

治療と評価を意識して超音波を使い分けられるようになると、症状に合わせて適切な流れを組みやすくなります。痛みの原因をエコーで把握し、その結果をもとに治療用超音波や手技、運動指導を組み合わせていくことで、無駄の少ないプランが立てられるようになります。また、患者さんに対しても「今は状態を確認する時間」「ここからは治療の時間」と区切って説明できるため、施術全体の見通しを共有しやすくなります。

スタッフ教育や患者説明にも活かせる

超音波の目的と仕様の違いを整理しておくことは、スタッフ教育にも大きな価値があります。新人スタッフに対して、「治療用は組織を整える役割」「エコーは状態を見極める役割」とシンプルに伝えた上で、周波数やモードの違いを補足していけば、理解が進みやすくなります。患者説明の場面でも、難しい専門用語を避けながら、「治す超音波」と「見る超音波」を対比させることで、安心感と納得感を高められるでしょう。こうした積み重ねが、施術の質だけでなく、院全体の信頼にもつながっていきます。

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