痛みの“門”が閉じる?ゲートコントロール理論でわかる鎮痛の科学
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棚橋 和宏
(たなはし かずひろ)
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Contents
ゲートコントロール理論とは何か?痛みの基本構造を解説

痛みが脳へ届くまでの流れ
私たちが「痛い」と感じるとき、刺激は突然脳に届くわけではありません。まず、指をぶつける・腰をひねるなどの刺激が、皮膚や筋肉にある「痛みを感じるセンサー」に拾われます。その情報が細い神経の線路を通って脊髄に集まり、そこからさらに上へと運ばれていき、最終的に脳に届いたときにはじめて「痛い」と認識されます。
この一連の流れの中で重要なのが、脊髄で行われている“信号の調整”です。痛みの信号だけが一方的に流れているのではなく、さまざまな種類の神経が同じ場所を通り、互いに影響し合いながら脳に届く量が決まっていきます。ゲートコントロール理論は、この「脊髄での調整」に注目した考え方です。
脊髄で痛みが調整される仕組み
ゲートコントロール理論では、脊髄の中に「痛みの門(ゲート)」のような働きをする部分があると考えます。この門は、痛みの信号をそのまま通すこともあれば、弱めて通したり、一時的に通しにくくしたりすることもあります。門が開いているときは痛みの信号がたくさん脳に届き、「強く痛い」と感じます。逆に門が閉じ気味になると、同じ刺激でも「痛みが軽くなった」と感じやすくなります。
ここでポイントになるのが、痛みの信号だけでなく、「触った感覚」や「振動の刺激」を伝える太い神経も同じ場所を通っていることです。太い神経からの刺激が増えると、この門が閉じる方向に働き、結果として痛みの信号が通りにくくなります。これがゲートコントロール理論の中心となる考え方です。
ゲート理論が生まれた背景と役割
ゲートコントロール理論が登場する前は、「強い刺激があればその分だけ痛みも強くなる」という、単純な考え方が主流でした。しかし実際の臨床では、同じ検査結果でも「とても痛い」という人もいれば、「ほとんど気にならない」という人もいます。また、ケガをしていても試合中は痛みを感じにくく、落ち着いてから急に痛くなるといった場面も見られます。このような現象を説明するために、「痛みは単純な強弱だけでは説明できない」という視点から提案されたのがゲートコントロール理論です。
この理論によって、「痛みは末梢の刺激だけでなく、脊髄や脳での調整によっても変わる」という考えが広まりました。その結果、電気治療や手技療法、温熱療法などが、単に筋肉をほぐすだけでなく、痛みの“門”に働きかけているという理解につながり、現在の鎮痛アプローチの土台となっています。
痛みの“門”が閉じる仕組み:Aβ線維とゲートの関係

太い神経線維(Aβ線維)が果たす役割
痛みの信号を伝える神経は「細い線維」で、触れた感覚や振動を伝える神経は「太い線維」でできています。この太い線維の代表がAβ線維です。Aβ線維は伝導速度が速く、皮膚をさすったときのやわらかい刺激や、振動のような刺激をすばやく脊髄へ届けます。
ゲートコントロール理論では、このAβ線維の刺激が“痛みの門”を閉じる方向に働くとされています。つまり、痛みの信号よりも早く、そして強く門にアプローチすることで、結果として痛みを伝えにくくする効果が生まれます。これが「さすると痛みが軽くなる」という日常の現象につながっています。
痛みの信号が弱まるメカニズム
痛みの信号は細い線維によって脊髄に運ばれますが、Aβ線維の刺激が入ると、脊髄にある“抑制の働きをする細胞”が活性化します。この細胞が働くと、痛みの信号はその先へ進みにくくなり、結果として脳に届く量が減少します。
同じ刺激でも、状況によって痛みが軽く感じることがあるのは、この「抑制の仕組み」が働くためです。たとえば、急に腕をぶつけたとき、とっさにその部分を押さえると少し楽になるのは、Aβ線維が門を閉じる方向に作用しているためです。痛みそのものを消したわけではなく、門の開き具合が変化しているのです。
痛みをさすると和らぐ理由
痛む場所を思わずさする行動は、誰もが自然に行います。この行動には理由があり、Aβ線維に触刺激が入ることで、門が閉じやすくなり痛みが弱く感じられます。強く押す必要はなく、軽い刺激でも十分に働きます。
これは、痛みが出たときに身体が自然と行う「防御反応」ともいえます。実際、赤ちゃんも痛いと感じたときに手で触れるしぐさを見せ、動物でも同様の行動が見られます。人間に備わった根本的な反応であり、誰もが持っている痛み調節の仕組みともいえます。
触刺激が痛みを抑える科学
触れる刺激は痛みよりも速く脊髄に届き、そこで痛みの信号を弱める方向に作用します。この“スピードの差”が、痛みを軽減する大きな理由です。たとえ痛みの原因がそのまま残っていても、触刺激が優先的にゲートに作用することで、一時的に痛みの感じ方が変わることがあります。
日常でも起こるゲート現象の例
料理中に包丁で指を切ってしまったとき、つい反射的に指を握ったりさすったりすることがあります。運動中にひねった足首を押さえる行動も同じで、Aβ線維の刺激によってゲートを閉じる反応が働いています。また、電車のつり革を握ると肩の痛みが軽くなる、マッサージを受けると一時的に楽になるといった現象も、この仕組みで説明できます。
電気治療・手技療法が痛みを和らげる理由

電気刺激がゲートを閉じる流れ
電気治療では、皮膚から電気の刺激を与えることでAβ線維が反応し、ゲートを閉じる方向へと働きます。特に干渉波や低周波治療器は、このAβ線維を効率よく刺激できるように設計されており、刺激が滑らかに深く届きやすい特徴があります。こうした刺激が脊髄に入ると、“痛みの門”を閉じる抑制細胞が活性化し、痛みの信号が脳へ届く量が減ります。
この流れによって、同じケガや症状でも「電気を当てると楽になる」という経験が生まれます。電気治療の鎮痛効果は、筋肉を動かすためだけでなく、神経の通り道に働きかける点にも理由があるのです。
手技が痛みを軽減する根拠
マッサージや軽い圧、関節周りをさするような手技も、Aβ線維を刺激しやすい方法です。施術者の手が触れることで生まれるやわらかな刺激が脊髄に届くと、痛みを伝える細い線維よりも先にゲートへ働きかけます。その結果、痛みの信号は弱められ、患者は「押されているのに痛くない」「触られると少し楽になる」と感じやすくなります。
手技が持つこの鎮痛効果は、多くの患者が求める“安心感”にもつながっており、人の手による刺激が持つ価値は神経学的にも裏づけられています。
低周波・干渉波でのゲート理論の活用
電気治療機器の多くは、ゲートコントロール理論を応用して設計されています。低周波治療器は皮膚表面でAβ線維を刺激しやすく、ビリビリした軽い刺激がゲートを閉じる作用を生みます。一方、干渉波は皮膚抵抗の影響を受けにくいため、より深い組織へ滑らかな刺激を届けられるという特徴があります。
患者によって「浅い刺激が効きやすい」「深いところが痛い」と感じ方が異なるため、刺激の種類を使い分けることで、ゲートコントロールをより効果的に働かせることができます。
👉低周波と干渉波の違いについては、別記事で解説しています。
https://emio.jp/news/接骨院・鍼灸院向け|低周波と干渉波の違いは?/
どの刺激がAβ線維を刺激しやすいか
Aβ線維は、軽い振動や触れられる感覚によって反応しやすいため、刺激が滑らかでリズムのある電気ほど効果が生まれやすくなります。干渉波が痛みの軽減に適しているのは、こうした神経の性質をうまく利用しているためです。
深部刺激と表層刺激の違い
表層痛には軽めの刺激でも効果がありますが、関節周囲や深層筋の痛みには、深部まで届く刺激が必要になります。干渉波が深部痛に向いているのは、Aβ線維の反応を引き出しつつ、深層へ刺激を届けやすい特徴を持っているためです。症状に合わせて刺激の深さを変えることで、より適切な鎮痛効果を期待できます。
ゲートコントロール理論の臨床応用と治療のポイント

急性期と慢性期での使い分け
ゲートコントロール理論は、急性期と慢性期のどちらにも応用できますが、刺激の入れ方には違いがあります。急性期では痛みに敏感になっていることが多く、触れるだけでもつらい場合があります。このようなときは、皮膚表面のAβ線維を軽く刺激できる、弱い電気刺激や軽い手技が向いています。刺激を少し入れるだけでも、門が閉じやすくなり、痛みが和らぎやすくなります。
慢性期では、深い部分の筋肉や関節が関係していることが多く、浅い刺激だけでは十分に効果が出ない場合があります。深層へ届く干渉波や、しっかりと押す手技などを使い、内部の組織に働きかけることでゲートを閉じる作用を引き出しやすくなります。症状の段階によって刺激の深さや強さを調整することが、臨床での大きなポイントです。
電気刺激の強さ・周波数の考え方
電気治療でゲートを閉じる効果を得るには、刺激の強さと周波数を適切に選ぶ必要があります。強すぎる刺激は患者が不快に感じやすく、Aβ線維ではなく痛みの線維を刺激してしまうことがあるため注意が必要です。心地よい範囲の刺激がAβ線維に最も作用しやすく、門を閉じる働きにつながります。
周波数に関しては、低周波は表層の線維に作用しやすく、干渉波のような中周波は深層へ刺激を届けやすい特徴があります。症状に合わせて周波数帯を選ぶことで、より効率よくゲートを閉じる効果を生み出せます。
痛みの種類に応じた刺激選択
痛みと一口に言っても、その原因や感じ方はさまざまです。表面に近い場所が痛む場合は、軽い触刺激や表層に作用する電気刺激が適しています。逆に、関節周囲や深層筋の痛みには、深い部分へ届く刺激が必要になります。ゲートコントロール理論では「どの線維が反応しやすいか」が重要となり、表層か深部かによって刺激の入れ方が変わります。
表層痛・深部痛でのアプローチの違い
表層痛はAβ線維の反応だけで軽減することが多く、軽い電気や手技でも効果が出やすい傾向があります。一方、深部痛では、Aβ線維の刺激と同時に深層の筋肉へ働きかける必要があり、干渉波のように深部へ届く刺激が適しています。痛みの場所と深さを判断し、適切な刺激を選ぶことが治療効果を左右します。
患者の感覚に合わせた刺激調整法
刺激は強ければよいわけではなく、患者が「気持ちいい」「ちょうど良い」と感じる範囲が最もAβ線維の反応が出やすく、門を閉じる効果につながります。患者の反応を見ながら細かく調整することで、痛みの感じ方は大きく変わります。症状だけでなく、刺激に対する感受性にも配慮することが、臨床での重要ポイントです。
患者への説明に使えるゲート理論の伝え方

難しい言葉を使わずに説明する方法
ゲートコントロール理論を患者に説明する際は、専門用語を避け、身近な例を使うと伝わりやすくなります。「痛みの通り道に“門”があり、触れたり電気を当てたりすると、その門が一時的に閉じて痛みを通しにくくなる」というように、イメージが浮かぶ言葉に置き換えることが大切です。
科学的な仕組みをそのまま伝えるよりも、患者自身が体験したことのある場面に当てはめることで、理解が深まり治療への納得感も高まります。
痛みが軽くなる理由を短く伝えるコツ
患者は長い説明よりも、簡潔で分かりやすい言葉を求めています。例えば「痛いところをさすると楽になるのは、身体が痛みを弱めるスイッチを入れているからです」という説明は、多くの人が直感的に理解できます。
電気治療の場合も「この電気は、痛みの信号を通しにくくする働きがあります」と伝えるだけで、効果のイメージがつかみやすくなります。短い説明でも、本質が伝われば患者は治療に安心感を持ちやすくなります。
説明で信頼関係を高めるポイント
診療や施術の現場では、患者が「なぜその治療をするのか」を理解できるかどうかが信頼関係に直結します。ゲート理論を説明するときは、患者の症状や状況に合わせて言葉を選び、「今の痛みにはこの刺激が合っています」というように、治療の根拠を本人に合わせて伝えることが重要です。
また、説明の中で患者の反応や不安を丁寧に聞き取ることで、治療の効果も高まり、納得して治療に向き合えるようになります。ゲート理論は単なる理論ではなく、患者とのコミュニケーションを円滑にする“道具”としても活用できます。



