過去最大の賃金引上げへ 新たに発表された“経済産業省や厚生労働省の賃金引上げ支援策”の内容とは
ブログ監修者

プランナー
棚橋和宏
(たなはしかずひろ)
【保有資格:医療経営士3級】

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Contents
2025年度の最低賃金引上げの概要と影響

全国平均と主要都市の最低賃金水準
2025年度は最低賃金の引上げ幅が過去最大水準となり、全国加重平均では大幅な上昇が見込まれます。主要都市では東京・神奈川が1,200円台に達し、大阪・愛知も1,100円台へ。一方で地方圏は1,000円台前半が中心ですが、全国で1,000円を下回らない水準となる見通しです。さらに政策運営上は「全国目安」の引上げ額63円が基準として示され、地域の議論の起点になっています。本記事のキーワード「過去最大の賃金引上げ 経済産業省や厚生労働省の賃金引上げ支援策とは」に沿って、規模感と地域差の両面から影響を整理していきます。
引上げ施行時期とスケジュール
新しい最低賃金は各都道府県労働局の決定を経て、例年通りですと10月から11月にかけて順次適用が進みますが、本年度は10月から来年の3月までと、発行日が都道府県により大きくことなります。事業者にとって大切なのは、改定日の直前に賃金表や就業規則の反映、給与システムの設定変更、掲示や周知の完了までを逆算しておくことです。スタッフへの説明は早めに行い、所定内・所定外の時間単価や手当の整合を同時に確認しておくと、後からの差額精算を避けやすくなります。
賃金引上げが経済や中小事業者に与える影響
人件費の上昇は、サービス価格や施術単価、仕入れや外注費の改定圧力へと波及します。特に中小企業では、収益を圧迫する前に「価格交渉」と「生産性向上」を並行して進めることが重要です。政府もサプライチェーン全体での価格転嫁や支払条件の適正化を強化しており、業界横断の行動計画や発注者への働きかけが続いています。一方で、投資と組み合わせた生産性向上を後押しする支援も拡充され、賃上げの負担を設備・IT投資による効率化で吸収する流れが明確になりました。
経済産業省の賃金引上げ支援策とは

価格転嫁対策の強化
経済産業省は、賃上げの財源を確保するために「適正な価格転嫁」を最重要視しています。改正された下請法では、一方的な価格設定や支払期間の長期化といった慣行を抑制し、サプライチェーン全体での適切な取引を徹底させることを狙っています 。さらに「価格交渉促進月間」などを通じて、大手発注者と中小企業の交渉状況を評価・公表する仕組みを導入し、交渉力の弱い事業者でも賃上げ原資を確保しやすい環境を整えています。これらの取り組みによって、鍼灸院や小規模事業者も材料費や備品購入時に不利な取引を避けやすくなり、結果として人件費に回せる資金を増やすことができます。
補助金・税制による賃上げ原資確保
経済産業省は補助金や税制を通じた賃上げ支援にも注力しています。持続化補助金では、販路開拓のための取り組みに対して賃上げ特例を活用した場合は200万円の補助が可能で、一定の賃上げを実施した場合に優遇されます 。また、賃上げ促進税制では、赤字の中小企業であっても繰越控除を活用できる仕組みを整え、利益が出ていない企業でも従業員の給与を上げやすくしました。さらに「100億企業」を目指す成長企業に対する特別支援や、事業承継・M&Aを通じた経営資源の有効活用も重視されています。これらは地域経済をけん引する中核企業を育てる狙いがあり、周辺の小規模事業者にも波及的な効果が期待されています。
生産性向上を後押しする補助金の要件緩和と加点措置
賃上げを支えるもう一つの柱は「生産性向上投資の支援」です。ものづくり補助金やIT導入補助金、省力化投資補助金では、対象となる事業者を拡大するため要件が緩和され、最低賃金付近で働く従業員が多い場合に補助率が通常より高く設定されています 。さらに、全国水準以上の賃上げを実施する企業には審査での加点措置も用意されており、積極的に取り組む事業者が選ばれやすい仕組みです。厚生労働省とも連携して支援制度の周知が強化されており、窓口での相談時に他省庁の補助金を紹介するなど横断的なサポートが受けられるのも特徴です。
厚生労働省の賃金引上げ支援策とは

業務改善助成金の拡充
厚生労働省が提供する支援策の中心は「業務改善助成金」です。これは事業場内の最低賃金を引き上げ、あわせて設備投資などの生産性向上を行った中小企業に対し、その費用の一部を助成する制度です。2025年度9月からは対象範囲が拡大され、改定後の地域別最低賃金未満の従業員を雇用する事業所も対象となりました。また、これまで必要だった「賃金引上げ計画書」の提出が不要になり、施行日前日までに引き上げが行われていれば申請可能となる点も大きな改善です。助成額は引上げ幅によって異なり、最大で600万円まで受け取ることができます。
👇別記事でも解説してます👇
https://emio.jp/news/令和7年度業務改善助成金|9月5日に変更された対/
キャリアアップ助成金による非正規雇用者支援
パートや有期雇用といった非正規雇用労働者の待遇改善を目的に「キャリアアップ助成金」が用意されています。賃金規定を3%以上引き上げて適用した場合に助成され、改定幅に応じて一人あたり4万〜7万円が支給されます。さらに中小企業が5%以上の改定を行い、10人規模の有期雇用者を対象にした場合、65万円の助成を受けられる事例もあります。単なる賃金改善だけでなく、職務評価や昇給制度を導入した際には加算措置があるため、長期的な人材定着に直結する制度といえます。
働き方改革推進支援助成金・人材確保支援の活用
労働時間の削減や有給休暇の取得促進を後押しするのが「働き方改革推進支援助成金」です。建設業など業種別の課題に対応するコースや、勤務間インターバルを導入するコースなどがあり、成果に応じて25万〜550万円が助成されます。また「人材確保等支援助成金」では、賃金規定制度や人事評価制度を導入し、さらに5%以上の賃上げを実施した場合に最大287.5万円が支給されます。特に人手不足に悩む業界では、離職率を下げながら安定的な人材確保を進めるうえで有効な支援策です。
人材開発支援助成金などスキルアップ支援
賃金を引き上げるだけでなく、従業員のスキル向上を目的とした「人材開発支援助成金」も活用可能です。専門的な知識や技能を習得する訓練を行った場合、経費や訓練中の賃金の一部が助成されます。中小企業が10時間以上の訓練を実施し、その後に賃上げを行えば7万円程度が支給されるケースもあります。さらに「特定求職者雇用開発助成金」や「産業雇用安定助成金」なども組み合わせることで、成長分野への人材移動やスキルアップを伴う雇用確保が実現します。
接骨院・鍼灸院・中小事業者が活用できる具体的なポイント

施術所経営における賃金引上げ支援の活かし方
接骨院・鍼灸院のような小規模事業では、最低賃金の上昇が経営を直撃しやすい一方で、支援策を活用すれば安定経営につなげられます。例えば業務改善助成金を利用して新しい施術機器を導入すれば、患者へのサービスの質を高めながら業務効率を上げることができます。またキャリアアップ助成金を使ってパートやアルバイトの待遇を改善すれば、人材定着につながり、教育コストや採用コストを抑える効果も見込めます。単に人件費の負担を減らすだけでなく、経営力の底上げを狙える点が大きなメリットです。
支援策を利用するための申請準備と注意点
支援を受けるには事前準備が欠かせません。賃金規定や就業規則の改定はもちろん、申請書類には経営計画や賃金台帳など具体的な証拠が必要です。厚生労働省や経済産業省の制度は後払い方式が多いため、先に投資や賃上げを実施する資金を確保することも大切です。申請期限を過ぎると対象外になるため、各都道府県の労働局やよろず支援拠点に早めに相談し、スケジュールを逆算して行動するのが賢明です。特に人員規模が小さい事業所では、外部の専門家や社会保険労務士のサポートを得ると安心して進められます。
補助金と助成金を組み合わせた経営改善事例
実際の取り組みとしては、販路開拓に使える持続化補助金と、設備投資に活用できる業務改善助成金を組み合わせる方法があります。例えば接骨院が地域向けの広報活動を行い、新規患者を獲得しつつ、新しいベッドや予約管理システムを導入することで効率化と収益改善を同時に実現できます。また、キャリアアップ助成金を組み合わせることで、非正規スタッフの時給を引き上げつつ、離職率を下げる施策も可能です。複数の支援策をうまく組み合わせることによって、ただ人件費を補うだけでなく、地域に選ばれる治療院へ成長することが期待できます。
まとめ:過去最大の賃金引上げを経営改善のチャンスに変える

2025年度の最低賃金引上げは、全国平均で63円という過去最大の幅となり、多くの中小事業者や鍼灸院にとって大きな負担に映るかもしれません。しかし、経済産業省や厚生労働省が用意する多様な支援策を組み合わせることで、その負担を和らげながら新しい成長のきっかけに変えることができます。
経済産業省の補助金制度を利用すれば、販路拡大や設備投資を後押しする資金を確保でき、厚生労働省の助成金では人材定着や働き方改革に直結する支援が得られます。これらを計画的に活用することで、単なるコスト増を超えて「より効率的で強い経営体制」へと進化させることが可能です。
最低賃金の上昇は避けられない現実ですが、その環境変化を逆手に取り、経営改善やサービス品質の向上につなげる姿勢が求められます。本記事で紹介した支援策を参考に、自院に合った取り組みを検討し、賃上げを地域から信頼される事業づくりのチャンスへとつなげていきましょう。