耐用年数と耐用期間って何?接骨院・鍼灸院がコストを最小化する4つの判断基準

ブログ監修者

プランナー

棚橋 和宏
(たなはし かずひろ)

【保有資格:医療経営士3級】

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耐用年数と耐用期間の基本的な違いとは?

耐用年数とは?税務上の考え方を理解する

医療機器の「耐用年数」は、簡単に言うと「何年かけて経費にしていくか」を決めるための年数です。

接骨院・鍼灸院で使う低周波治療器や干渉波治療器、超音波治療器なども、このルールにもとづいて六年などの年数がきめられています。これは、国の税金のきまりにもとづいた「お金のうえでの寿命」です。

ここで気をつけたいのは、耐用年数がすぎたからといって、すぐに機器がつかえなくなるわけではないという点です。見た目もまだきれいで、ふつうにスイッチも入るかもしれません。それでも帳簿のうえでは「価値をつかいきった」とみなされ、減価償却が終わるというだけの話になります。

つまり、耐用年数はあくまで会計上の目安であり、「安全に使えるかどうか」を決める数字ではないとおぼえておくと良いでしょう。

耐用期間とは?メーカーが定める実使用の限界

「耐用期間」は、同じような言葉に見えますが、考え方は全く違います。こちらはメーカーが「ふつうの条件でつかったとき、このくらいの年数までは安全に使えることを想定しています」としめした目安です。

つまり、現場でどれくらい安心してつかえるかを考えた「実際の寿命」に近い考え方といえます。

同じ治療器でも、毎日フル回転で使う院と、予約制でゆったり使う院では、こわれやすさが変わります。丁寧に清そうし、こまめに点検していれば、想定より長くつかえることもあるでしょう。逆に、ほこりや湿気の多い場所でつかっていると、早く不具合が出ることもあります。

メーカーは、修理に必要な部品をどのくらいの年数まで保管するか、いつまで修理の受付をおこなうか、といった事も含めて耐用期間を考えています。接骨院・鍼灸院が安全に機器をつかい続けるためには、この「耐用期間」をおさえておくことがとても大切です。

接骨院・鍼灸院が誤解しやすいポイント

現場の先生がよく口にされるのが「まだ動いているから、買い替えはまだ先でいいだろう」という考え方です。気持ちはよくわかりますが、ここにはいくつかの落とし穴があります。
ひとつは、「動いている=安全」と思いこんでしまうことです。外から見えなくても、長年使った機器は中の部品がすこしずつ劣化しています。出力が安定しなかったり、ある日とつぜん電源が入らなくなったりすることもありえます。

もうひとつは、「こわれたらそのときに修理すればいい」という考えです。修理部品の保管期間が終わっていると、メーカーが部品を持っておらず、なおしたくてもなおせない状況になることがあります。この場合、急に機器が使えなくなり、予定外のタイミングで高額な買い替えをしなければならないかもしれません。

「耐用年数と耐用期間って何?接骨院・鍼灸院がコストを最小化する4つの判断基準」というテーマで考えると、まずはこの二つの言葉の違いをおさえ、「まだ動くから大丈夫」という感覚だけで判断しないことがスタートラインになります。

なぜ接骨院・鍼灸院は「耐用期間」を重視すべきなのか?

医療機器は「壊れる前に交換」が基本

医療機器は、家庭用電化製品のように「完全に壊れてから考える」というスタイルが向いているとはいえません。とくに電気治療器など、院の中で出番が多い機器ほど、止まってしまうとその日の施術がまわらなくなります。

患者さんを目の前にして「きょうは機械が壊れたので、いつもの施術ができません」と伝えるのは、お互いにとって大きなストレスです。

そのため、医療機器は「こわれる前に次の一手を考える」ことが大事になります。耐用期間の終わりが近づいてきたタイミングで、買い替えの計画を立てておけば、あわてずに機種選びや見積もりの比較ができるでしょう。
結果として、急いで高い機械を選んでしまうリスクをへらし、コストもおさえやすくなります。

修理対応期間と安全性の関係

メーカーの修理対応期間は、安全性と直結しています。修理の受付がおわってしまうと、ちいさな不具合でも対応してもらえない事が増えます。音や表示の不具合など、今はなんとか動いていても、そのうち大きなトラブルにつながるおそれもあります。
修理が受けられないまま使い続けると、出力が不安定になったり、意図せぬ誤作動をおこしたりするリスクが高まります。
接骨院・鍼灸院では、患者さんとのちかい距離で機器をつかいます。安全への信頼がゆらぐような状態は、できるだけさけたいところです。

だからこそ、「まだ使えるかどうか」だけでなく、「修理してもらえるかどうか」「部品がちゃんとあるかどうか」という視点で、耐用期間や修理対応期間をチェックすることが大切になります。

院の信用・患者満足度に与える影響

機器のトラブルは、そのまま院の信用にも影響します。たとえば、通院中の患者さんが「いつも受けている電気治療が、きょうは機械の不調でできなかった」と感じる日が何度か続いたらどうでしょうか。

「ここは少し大丈夫かな」と不安になり、他の院を探しはじめるきっかけになってしまうかもしれません。

逆に、いつも安定した機器で丁寧な施術をおこなっていれば、「ここなら安心して通える」と感じてもらいやすくなります。これは、チラシやホームページのアピールよりも、ずっと強い信用づくりにつながる部分です。
耐用期間を意識して計画的に更新している院は、結果として「安全・安心」という見えない価値を手に入れているともいえます。

修理対応期間・部品保持期間から読み解く更新タイミング

修理保証期間と実際のサポート範囲

多くの医療機器には、購入してから一定のあいだ「保証期間」がもうけられています。
この期間中におきた故障であれば、無償で修理してもらえたり、部品交換をしてもらえたりするケースが多いでしょう。ただし、保証期間がすぎると、同じ故障でも有償対応になったり、「この部分は対象外です」といわれることもあります。

このため、接骨院・鍼灸院としては、「いつまでが保証期間なのか」「保証が切れたあと、どのくらいの費用で修理できそうか」を、できるかぎり早い段階でイメージしておくことが大事です。保証が切れた直後から急にトラブルが増える機種もあるため、修理履歴を見ながら、更新のタイミングをさぐっていくとよいでしょう。

修理部品の保持期間が切れると何が起きるか

メーカーは、医療機器の修理に必要な部品を、ある程度の年数までは保管してくれます。しかし、その期間がおわると、すこし状況が変わります。
部品の生産がおわり、在庫もなくなってしまうと、「なおしたくても部品がないので修理できません」という回答になってしまうからです。

修理不能による突然の稼働停止リスク

部品の保管期間が終わったあとで大きな故障がおきると、その機器はその日からつかえなくなるかもしれません。これは、予約でいっぱいの日や、混み合う時間帯におこるほど、院にとって大きなダメージになります。

代わりの機器がなければ、その日の施術メニューを変更したり、患者さんにおわびをしながら対応したりしなければなりません。こうした「突然の稼働停止」は、現場のストレスだけでなく、売上の面でも大きなマイナスになります。

代替部品の調達コスト増の問題

メーカーから純正の部品が手にはいらなくなると、ほかのルートで似たような部品を探すしかありません。この場合、価格が高くなったり、信頼性がはっきりしない部品をえらばざるをえなかったりすることがあります。
また、対象機器が医療機器の場合、改造扱いとして違法になります。

メーカー対応終了を見極めるチェック項目

更新タイミングを見きわめるには、「メーカーの対応がいつまで続きそうか」を早めにチェックしておくことがポイントです。カタログや説明書、メーカーのホームページなどには、修理対応や部品保管に関する目安が書かれていることが多くあります。

また、担当の営業やサービスマンに「この機種はあと何年くらい修理できますか」「部品はいつごろまでありますか」とたずねておくと、より具体的な感覚をつかみやすくなるでしょう。

コストを最小化するための4つの判断基準

判断基準①:耐用年数・耐用期間の正しい理解

まずは、「耐用年数」と「耐用期間」の違いをきちんとおさえることが出発点になります。耐用年数は会計上の目安であり、耐用期間は安全に使える期間の目安です。
接骨院・鍼灸院がコストを最小化するには、数字だけでなく、「現場で安全に使えるかどうか」という視点をふくめて判断することが大切だといえるでしょう。

判断基準②:メーカーの部品供給期限の確認

つぎに意識したいのが、部品の供給期限です。どれだけ大切に使っていても、部品が手にはいらなくなれば、修理はできません。

購入の段階で「どのくらいの年数まで部品がありますか」と確認しておくと、将来の更新タイミングをイメージしやすくなります。すでに導入済みの機器についても、いちどメーカーや販売店に問い合わせてみると、思ったより情報が得られることが多いはずです。

判断基準③:修理記録と故障頻度から判断する

院内での「故障の記録」をつけておくことも、コストをおさえる上で役に立ちます。

一年の間に同じ機器で何度も修理が発生しているなら、その機器はそろそろ限界に近づいているサインかもしれません。修理代の合計をならべてみると、「このペースでいくと、二年でかなりの金額になる」といったことも見えてきます。

こうした記録にもとづいて、「あと何年使うつもりか」「そのあいだにどれくらい修理費がかかりそうか」をざっくり計算してみるとよいでしょう。数字でくらべてみると、「思っていたより早めに更新したほうが得だ」という結論になるケースも少なくありません。

判断基準④:更新費用と機会損失の比較

最後のポイントは、「更新費用」と「機会損失」をくらべて考えることです。

新しい機器を入れるには、もちろんまとまったお金が必要になります。ただし、こわれやすい古い機器を無理に使い続けると、ある日とつぜん施術ができなくなり、その日の売上が落ち込んでしまうおそれがあります。さらに、患者さんの信頼がさがり、通院が減ってしまうかもしれません。

「もしこの機器が一週間つかえなくなったら、どれくらいの売上が減るだろうか」「何人の患者さんに迷惑をかけてしまうだろうか」といった視点で考えてみると、更新の価値が見えやすくなります。

接骨院・鍼灸院がコストを最小化するというのは、単に出ていくお金を減らすだけではありません。安全性や信用を守りながら、長い目で見て一番無駄の少ない選択をすることだといえるでしょう。

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