労災保険料を払っていないと業務改善助成金は申請不可!接骨院・鍼灸院が守るべき5つの必須条件
ブログ監修者
プランナー
棚橋 和宏
(たなはし かずひろ)
【保有資格:医療経営士3級】
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Contents
なぜ労災保険料を支払っていないと業務改善助成金を申請できないのか

接骨院や鍼灸院でスタッフを雇っている場合、労災保険に加入し、保険料をきちんと納めることは「選べる制度」ではなく法律上の義務です。そして業務改善助成金は、その前提が整っている事業所だけが利用できる制度として設計されています。つまり、労災保険に未加入であったり、加入していても保険料を納めていなかったりすると、その時点で「助成金の対象外」と見なされてしまいます。
業務改善助成金は、賃金引き上げや設備投資を通じて職場環境を良くしていくための支援策です。国としては、労働者を守る最低限のルールを守っている事業所に対して、公的なお金を投入したいと考えています。その最低ラインが、労働保険への適正な加入と納付です。ここが整っていないと、「そもそも労働法令を守っていない」と判断され、申請書をどれだけ丁寧に作り込んでも入口で止まってしまいます。
接骨院・鍼灸院の先生方の中には、「うちは小規模だし」「スタッフもパートだけだから」と考えて、労災保険を後回しにしているケースもあります。しかし、パートやアルバイトであっても、雇用契約を結び賃金を支払っている時点で労災保険の対象です。こうした基本を押さえておかないと、いざ業務改善助成金を使ってベッドや物療機器の更新をしたいと思ったときに、「労災に入っていないので申請できません」と言われてしまうことになりかねません。
この記事では、なぜ労災保険の加入と保険料の納付が業務改善助成金の絶対条件なのかを入り口に、接骨院・鍼灸院が具体的にどこを整えれば良いのかを順番に解説していきます。
労働保険への加入が助成金の必須条件である理由
業務改善助成金の案内や手引きを見ると、「労働保険に加入していること」という文言が出てきます。ここでいう労働保険とは、労災保険と雇用保険をセットにした総称です。国の助成金は、労働基準法や労働保険のルールを守っている事業所を前提に制度設計されており、「まずは法律を守っているかどうか」が入口のチェックポイントになります。
労災保険は、スタッフが業務中や通勤途中にけがや病気になったときに、公的な補償を行うための仕組みです。万が一のときに従業員やその家族の生活を守る役割を担っています。こうした社会的な安全網を支えるために、事業主は保険料を負担する義務があります。業務改善助成金は、そうした義務を果たしている事業主に対して、さらに職場環境の改善を後押しする制度と考えるとイメージしやすくなります。
もし労働保険に加入していない事業所にも助成金を出してしまうと、「ルールを守らなくても公的なお金がもらえる」というおかしな状態になります。そのため、労働保険への適正な加入と納付が、助成金利用のための最低条件として位置付けられているのです。
労災保険料未納が「申請不可」になる仕組み
労災保険に加入しているだけでは不十分で、保険料をきちんと納めているかどうかも確認されます。業務改善助成金の申請手続きでは、労働保険の概算・確定保険料の申告状況や、未納がないかを管轄の機関がチェックします。ここで未納や滞納が見つかると、「要件を満たしていない」と判断され、申請が受け付けられない、あるいは途中で止まってしまうことがあります。
接骨院・鍼灸院では、本業が忙しくて事務手続きが後回しになることも少なくありません。年度更新の手続きが遅れたり、納付書を紛失してしまったりするだけで、結果的に未納の状態になることがあります。本人としては「うっかり」でも、公的な制度の目線では「保険料を納めていない事業所」と見なされます。
労災保険料は、従業員の賃金総額と業種ごとの保険料率に基づいて計算される仕組みになっています。加入しているのに保険料を納めていないということは、「従業員を守るための負担を果たしていない」と判断されても仕方がありません。そのため、業務改善助成金のような制度では、加入と納付の両方がそろって初めて「要件クリア」と扱われます。
助成金の審査でチェックされる労働保険関連項目
業務改善助成金の審査では、申請書に書かれている内容だけでなく、裏側でいくつかの項目が照合されます。その中でも大きなポイントになるのが、労働保険に関する情報です。具体的には、労災保険と雇用保険の適用事業所として登録されているか、年度更新の手続きが行われているか、保険料の納付に遅れがないかといった点が確認されます。
また、申請書類の中で従業員数や賃金の水準を記載する場面がありますが、ここでの数字は労働保険の申告内容とも整合性が求められます。例えば、労働保険では「従業員がいる」と申告しているのに、実際には労災保険に入っていない、あるいは賃金台帳や出勤簿が整っていないような場合、助成金の審査で疑義が生じる可能性があります。
接骨院・鍼灸院としては、「いつも社労士に任せきりだからよく分からない」という状態のままにせず、自院が労災保険・雇用保険にきちんと加入しているか、保険料の納付が済んでいるかを一度確認しておくことが大切です。そうしておくことで、業務改善助成金の申請時に余計なつまずきを防ぎ、スムーズに手続きを進めやすくなります。
接骨院・鍼灸院が必ず守るべき労災保険の5つの必須条件

業務改善助成金を利用したいと考えている接骨院・鍼灸院にとって、労災保険の加入と納付は「準備しておくと良いもの」ではなく、法令遵守の基本として整っていなければならない項目です。助成金の手引きを見ると、労働保険への適正加入と納付が要件として明記されており、これが満たされていない場合は申請の入口で止まる可能性があります。
治療院を経営していると、施術や予約対応に追われることで事務手続きが後回しになってしまいがちです。しかし、労災保険に関する基本が整理されていないまま助成金を進めようとすると、「労働保険の加入が確認できません」などの理由で申請が進められなくなるケースが少なくありません。まずは治療院として守るべき5つの条件を把握し、自院がどこまで整っているのかを確認することが大切になります。
以下では、接骨院・鍼灸院が業務改善助成金を申請するうえで欠かせない5つの労災保険要件について、押さえるべきポイントとともに分かりやすく解説していきます。
労災保険の加入義務
接骨院・鍼灸院では、従業員を1名でも雇っている場合、必ず労災保険へ加入する必要があります。施術スタッフだけでなく、受付や事務を担当するパート・アルバイトも対象となり、雇用形態や勤務時間に関係なく加入義務が発生します。小規模院だからといって例外が認められるわけではなく、賃金を支払っている以上、必ず労災保険の適用事業所として手続きを行う必要があります。
労災保険料の適正な納付
加入しているだけでは要件を満たせません。労災保険料は毎年の年度更新で確定し、期限内に納めているかどうかが助成金審査で確認されます。忙しさから納付が遅れたり申告に抜けがあったりすると、未納状態とみなされ「要件を満たしていない」と判断されかねません。加入と納付がそろって初めて法令遵守が成立します。
雇用契約や賃金台帳など、労務管理の整備
従業員の人数、給与、勤務状況については、労働保険で申告している内容と整合性が求められます。雇用契約書や賃金台帳、出勤簿が不十分だったり、実態と異なる状態になっていたりすると、「労働保険の加入状況が確認できない」とされ、助成金の手続きに影響します。日常的な労務管理の整備が、制度利用の大きな前提となります。
通勤災害を含む補償の理解
労災保険には、院内でのケガだけでなく、通勤途中の事故も補償する仕組みがあります。従業員がどのような通勤経路を利用しているか、どの範囲が労災保険の対象になるのかを院側が理解しておくことは、事故発生時の対応にも直結します。業務改善助成金の申請では、労災の補償範囲を適切に把握しているかどうかも確認される場面があります。
特別加入が必要なケースの把握
院長自身が施術に入る、外部の現場へ出向く、個人事業主として活動する場合などでは、「特別加入」が必要なケースがあります。接骨院や鍼灸院では、事業主自身も施術や現場対応に関わることが少なくありません。自院に特別加入が必要かどうかを把握しておくことで、労働保険を適正に整えた状態で助成金申請を進められます。
労災保険の未加入・未納付がもたらす重大なリスクとは

労災保険に加入していない、あるいは加入していても保険料を納めていない状態は、接骨院・鍼灸院にとって大きな問題になります。助成金の申請ができないだけでなく、労務トラブルが発生した際の負担がすべて事業主にのしかかるため、経営そのものに影響を与える危険性があります。「少人数だから大丈夫」「事故なんて起きない」と考える治療院もありますが、現場での転倒や患者介助の際の負傷など、院内では予想外の事故が起きることも珍しくありません。未加入や未納付の状態は、こうしたリスクへの備えがないまま運営しているのと同じなのです。
業務改善助成金の申請を進める際にも、労災保険の加入状況は必ず確認されます。ここが整っていないと、その時点で制度を利用することができず、新しいベッドや物療機器の導入計画が全て白紙に戻ってしまう可能性があります。事業拡大や設備投資を考える治療院にとって、労災保険が適正に整っているかどうかは重要な前提条件と言えます。
助成金申請が受理されない
労災保険の加入や保険料の納付が確認できない場合、業務改善助成金は申請自体が受け付けられません。提出書類に不備がなくても、制度の要件を満たしていないと判断されてしまうためです。労災保険に関する整備は、助成金の「入口」で保険番号などをチェックされるため、未加入のまま申請しても審査が進まない仕組みになっています。
遡及指導・追徴金・行政指導のリスク
労災保険に加入していなかったり、納付が遅れている場合、後から加入手続きや追徴金の支払いを求められることがあります。労働基準監督署から指導が入ることもあり、院長自身が対応に追われるケースも少なくありません。こうした行政指導は、経営に心理的な負担をもたらし、本来の施術業務に影響することもあります。
労災事故発生時に全額事業主負担になる危険性
最も大きなリスクは、院内や通勤途中でスタッフがけがをした場合の補償です。通常であれば労災保険が治療費や休業補償をカバーしますが、未加入の場合はこれらをすべて院が負担する必要があります。特に長期の休業が必要なケースでは、数十万円から数百万円規模の支出が発生することもあり、経営を圧迫する大きな要因となります。
社会的信用の低下と求人への影響
労災保険に加入していない状態が公になると、治療院としての信頼が損なわれます。求人媒体によっては掲載できなくなるケースもあり、人材確保に影響します。地域の患者からの印象も悪くなり、院のブランディングにもマイナスになります。スタッフの安心感を守る意味でも、労災保険は欠かせない基盤といえます。
労災保険は法律上の義務|接骨院・鍼灸院が知っておくべき基礎知識

労災保険は、従業員を雇う全ての事業主に加入が義務付けられている制度です。接骨院や鍼灸院でも例外ではなく、スタッフを1名でも雇った時点で自動的に対象事業となります。制度の目的は、業務中や通勤中に起こるケガや病気から従業員を守り、治療費や休業補償を公的に支えることです。こうした安全網を維持するため、保険料は全額事業主負担となり、従業員に負担を求めることはできません。
治療院では、
「短時間パートも対象になるのか」
「施術補助のアルバイトにも労災が必要なのか」
といった質問がよくありますが、答えはどれも同じで、賃金を支払っている以上はすべて労災保険の対象になります。労働時間の長短は関係なく、雇用契約があるかどうかで判断されます。この点を誤解したまま運営していると、助成金申請や行政手続きでトラブルが起こる可能性があります。
労災保険の対象になる従業員とは
労災保険の対象は、正社員だけでなく、パート、アルバイト、短時間勤務者、学生アルバイトまで幅広く含まれます。接骨院・鍼灸院の現場では、受付業務や施術補助を担うスタッフが多様な勤務形態で働いていますが、こうした従業員も例外なく労災保険の対象です。雇用契約が存在すれば、勤務日数や時間に関係なく加入義務が発生します。
接骨院・鍼灸院の保険料率と費用目安
労災保険料は、従業員に支払った賃金総額に業種ごとの保険料率を掛けて計算します。接骨院や鍼灸院の保険料率は一般的に0.5%前後となっており、例えば年間の賃金総額が1,000万円であれば、労災保険料は5万円程度です。事業規模や業態に応じて負担額は変わりますが、万が一の補償や助成金の利用を考えれば非常に合理的な制度だと言えます。
労働保険(労災+雇用保険)全体の必要性
助成金の申請では、労災保険だけでなく雇用保険も含めた「労働保険全体」に適正加入しているかが確認されます。雇用保険は、週20時間以上働く従業員が対象になり、退職や育児などの際に給付が受けられる制度です。雇用保険の加入対象となる従業員の場合は、どちらか片方では要件を満たさず、両方の加入が揃って初めて制度利用の入り口に立てます。
雇用保険が必要になる従業員の条件
週の所定労働時間が20時間以上あり、31日以上の雇用見込みがある場合は雇用保険の加入が必要になります。接骨院・鍼灸院では、施術スタッフや受付スタッフがこの条件に該当するケースが多いため、労災保険とセットで確認しておくことが欠かせません。
労働保険未加入が違法となる理由
労災保険・雇用保険はどちらも法律で加入が義務付けられた制度であり、未加入のまま従業員を働かせることは法令違反にあたります。違反が発覚すると行政指導や遡及加入の対象となり、追徴金が発生するケースもあります。治療院の経営に不要なリスクを抱えないためにも、日頃から加入状況を確認しておくことが大切です。
すぐにできる!労災保険加入と納付までの具体的ステップ

労災保険の加入や保険料の納付は、難しい専門手続きだと思われがちですが、実際には順番に進めれば短時間で完了します。接骨院や鍼灸院のような小規模事業所であれば、必要書類もシンプルで、窓口での手続きも比較的スムーズです。特に業務改善助成金の申請を検討している場合は、加入手続きが遅れているだけで制度を利用できなくなることがあるため、早めに整えておくことが重要になります。ここでは、初めての方でも迷わず進められるよう、労災保険加入から納付までの流れをわかりやすく紹介します。
加入手続きに必要な書類一覧
労災保険に加入する際に必要となるのは、開業届けや賃金台帳、従業員名簿など、すでに院内で管理している書類が中心です。これに加えて、労働保険関係成立届や概算保険料申告書を作成・提出します。書類そのものは複雑ではありませんが、従業員の情報や事業内容を正確に記載することが求められます。書類が揃っていれば、後の手続きがスムーズに進みます。
提出先(労働基準監督署)と申請の流れ
労災保険の加入手続きは、事業所を管轄する労働基準監督署で行います。書類を提出すると、労働保険番号が付与され、それ以降は労災保険の適用事業所として扱われます。窓口での相談も可能で、初めての事業主でも不明点を確認しながら進められます。提出後は、保険料の概算額に基づいて納付書が発行され、指定期限までに納付すれば手続きは完了です。
労災保険料の計算と納付スケジュール
労災保険料は、従業員に支払った賃金総額に業種ごとの保険料率を掛けて計算します。接骨院・鍼灸院ではおよそ0.5%程度が一般的で、事業の規模によって変動します。保険料は年に一度まとめて納付する仕組みになっており、年度更新の時期になると確定保険料を計算し直します。期限内に納めていれば問題ありませんが、納付が遅れると未納扱いとなり、助成金申請の妨げになる場合があります。
接骨院・鍼灸院が最初に確認すべきチェックポイント
加入や納付の手順に入る前に、まずは従業員の勤務形態や賃金の状況を確認することが大切です。雇用契約書の有無、賃金台帳が適切に管理されているか、週の勤務時間が雇用保険の対象に該当するかといった点を把握しておくことで、手続きに必要な準備が明確になります。治療院の実態を整理してから動くことで、余計な手戻りを避け、スムーズに労災保険の加入・納付を進められます。
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