搬送周波数を上げると治療効果はどう変化する?深達性・刺激感・適応を解説

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棚橋 和宏
(たなはし かずひろ)

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搬送周波数を上げると何が変わるのか?基本の考え方

搬送周波数と皮膚抵抗の関係

干渉波治療器でいう搬送周波数は、電気を体の奥へ運ぶための「ベースの速さ」です。この数値を上げていくと、皮膚が持っている抵抗の影響を受けにくくなり、同じ出力でも電流がスムーズに体内へ入りやすくなります。低い周波数では、皮膚の表面で電気がとどまりやすく、チクチクした刺激が出てしまうことがありますが、高い搬送周波数ではこの表面でのロスが少なくなるイメージです。
皮膚抵抗が下がるということは、痛みや不快感を抑えながら、深い場所に電気を届けやすくなるということでもあります。つまり、搬送周波数を上げるという調整は、「電気の量をむやみに増やす」のではなく、「通り道を整えてあげる」操作だと考えると理解しやすくなります。

深部への電流到達性が変わる理由

搬送周波数が高くなると、電気の波が細かくなり、皮膚のバリアを通り抜けやすくなります。その結果、表面でエネルギーを消耗しにくくなり、より多くの電流を筋肉や関節の深い部分まで届けられるようになります。特に、殿部や大腿部など、脂肪や筋肉の層が厚い部位では、この違いが治療感として出やすくなります。

深部への到達性が変わるということは、同じ治療周波数でも「どこで効いているか」が変化するということです。浅いところだけで電気が回っている状態から、ターゲットとしている深部の筋層や関節包付近までしっかり届く状態に近づけられるため、搬送周波数の調整は深部アプローチを考えるうえで重要なポイントになります。

ここでイメージを整理するために、搬送周波数と電流の通り方の関係を表にまとめておきます。

搬送周波数皮膚でのロス深部への届きやすさ刺激の印象
低いやや大きいやや届きにくいはっきり・強め
高い小さい届きやすいなめらか・マイルド

このように、搬送周波数を上げることで、電気の「届く場所」と「届き方」が少しずつ変化していきます。

高搬送周波数が治療全体に与えるメリット

搬送周波数を高く設定する最大の利点は、深部への通りをよくしながら、刺激をやわらかくできる点にあります。皮膚の抵抗が小さくなることで、表面のピリピリ感や痛みが出にくくなり、同じ出力でも患者さんが受け入れやすい刺激に整えやすくなります。その結果、敏感な方や高齢者、急性期で強い刺激を避けたいケースでも、必要な部位にはしっかりアプローチしつつ、不快感を抑えた治療がしやすくなります。

また、治療者側にとっても、高搬送周波数を理解しておくことで「出力を上げたいが痛みは増やしたくない」といった場面での選択肢が広がります。単にパワーを強くするのではなく、搬送周波数を上げて通り道を改善するという発想を持てると、治療設計の幅が大きく広がり、機器の性能をより引き出せるようになります。

高搬送周波数が深達性に与える影響とは

5kHzと10kHz・16kHzの到達性の違い

搬送周波数がどれほど深部に電気を届けられるかは、周波数ごとに大きく異なります。一般的に5kHzは干渉波治療器の標準的な搬送周波数として使われますが、10kHzや16kHzになると電気の入り方がさらに滑らかになり、深部への通過効率が大きく高まります。波の細かさが増すことで皮膚表面の抵抗に邪魔されにくくなり、エネルギーを消耗せずに奥まで運びやすくなるためです。
たとえば、殿筋や大腿部など厚みのある部位では、この違いがよりはっきり感じられます。5kHzで治療していたときには「深いところまで届いていない感じ」があった症例でも、搬送周波数を10kHzにすることで「刺激が奥に入っていく感覚」が出やすくなることがあります。特に16kHzは皮膚抵抗を最も受けにくいため、深部をねらう治療では大きなメリットがあります。

深層筋・関節包へのアプローチがしやすくなる理由

深層筋や関節包周囲のように位置が深く、手技では届きにくい場所をねらう場合、高搬送周波数は大きな強みになります。高く設定することで電気の通り道が開きやすくなり、筋肉の層を越えて狙いたい組織まで刺激が届きやすくなるためです。治療周波数はそのままでも、搬送周波数を上げるだけで「深層で刺激が働くかどうか」が変わることがあります。
これは、治療の質を高めるうえで非常に有効な考え方です。深い層にある筋緊張や関節まわりのこわばりを改善したい場合、高搬送周波数を活用することで治療が届く範囲が広がり、より的確なアプローチにつながります。

脂肪層の厚い部位で変化しやすいポイント

脂肪層は電気の通りを弱めやすい性質があり、低い搬送周波数では表面で刺激が強く出てしまい、深部まで十分に電流が届かないことがあります。しかし搬送周波数を10kHzや16kHzのように高くすることで、この脂肪層の影響を受けにくくなり、狙いたい筋層や関節へ刺激を届かせやすくなります。

特に殿部、腰部、上腕後面などは脂肪の厚さに個人差があり、5kHzと10kHzで治療感が大きく変わるケースも少なくありません。高搬送周波数を使うことで、「表面が痛いだけで全く奥に響かない」という状態を避けられ、患者にとっても治療者にとっても扱いやすい刺激を作りやすくなります。

刺激感がどのように変化するかを解説

高搬送周波数特有の“やわらかい刺激”

搬送周波数を上げると、まず大きく変わるのが刺激の「質」です。高い搬送周波数では電気の波が細かくなり、皮膚の抵抗をほとんど受けずに体内へ入りやすくなります。そのため、通電の際に生じるチクチクした違和感が減り、刺激がやわらかく、なめらかに感じられます。同じ出力のままでも、患者さんからは「優しく入ってくる」「嫌な感じが少ない」といった声が聞かれることが多くなります。
従来の5kHzでは少し刺激が強く感じられる場面でも、10kHzや16kHzに設定することで、痛みに敏感な方でも受け入れやすい刺激が作れます。表面が痛くなることなく奥へ電気を送り届けられるため、刺激量の調整がしやすく、施術者にとっても扱いやすい特徴があります。

痛みを感じにくくなる仕組み

搬送周波数が高くなると痛みを感じにくくなる理由は、皮膚表面の感覚受容器が反応しにくくなるためです。低〜中程度の周波数帯では、皮膚にある受容器が電気を「刺激」として捉えやすく、ピリピリした感覚が目立つことがあります。しかし周波数が高くなるにつれ、これらの受容器が電気の速さに追いつけなくなり、刺激として感じにくくなります。

その結果として、深部に電気が届いていても皮膚表面では痛みを感じにくくなるため、治療全体の快適性が向上します。「強くすると痛い、弱くすると効きにくい」というジレンマを避けられる点で、高搬送周波数は非常に有効な選択肢になります。

深く響く感覚との違い(低搬送周波数との比較)

搬送周波数を上げると刺激がやわらかくなる一方で、「深く響くような治療感」は少し弱く感じられることがあります。これは、高搬送周波数が電気を抵抗なく通しやすくする反面、波の揺れが細かくなることで、深部の受容器が反応しにくくなるためです。
低い搬送周波数では、波が大きくゆっくりしているため、深い筋肉の受容器が反応しやすく、「ズーン」と響くような重厚な刺激が出やすくなります。逆に、高搬送周波数では滑らかな刺激が奥まで届きながらも、こうした“響き”を表現する力が少し弱まる傾向があります。
治療目的によっては響きが必要な場合もあるため、刺激の強さと快適性のバランスを考えながら搬送周波数を選ぶことが大切です。

👇搬送周波数と治療周波数に関しては、別記事で解説してます。合わせてご覧下さい👇
https://emio.jp/news/kannsyouhanotiryoyusyuuhasuutohannsousyuuhasuu/

周波数帯ごとの特徴と臨床での適応の違い

5kHzの特徴と適した症例

5kHzは干渉波治療器の中で最も一般的に使用される搬送周波数です。刺激の存在感がはっきりしており、深部に届く電流量も十分に確保されるため、治療効果を実感しやすいという特徴があります。表面での刺激が少し出る場合もありますが、その分、深い筋肉のこわばりや慢性的な張りに対して「しっかり響く」感覚を出しやすく、強めの治療感を好む患者にも向いています。
慢性腰痛や肩こりのように、深い筋肉の緊張が続いているケースでは、5kHzならではの重だるい響きが治療の納得感へつながりやすくなります。一方で、痛みに敏感な方や急性期の場合は刺激が強く感じられることがあるため、適応を見ながら使い分けることが大切です。

10kHzの特徴と適した症例

10kHzになると、刺激が一段とやわらかくなり、皮膚の抵抗をほとんど感じることなく深部まで電気が入りやすくなります。表面でのピリつきが抑えられるため、治療に不安を感じやすい患者や、電気刺激が苦手な方にも受け入れられやすい設定です。深部への通りがよくなることで、関節まわりの硬さや殿部の深い筋層など、触りづらい部位へのアプローチがしやすくなります。
10kHzの特長は、治療感を保ちながら快適性を高められる点にあります。深達性が向上しつつ、刺激が過剰になりにくいため、急性期から慢性期まで幅広い症状に適応しやすい周波数帯です。

16kHzの特徴と適した症例

16kHzは搬送周波数の中でも高い部類に入り、皮膚抵抗の影響をほとんど受けずに体の奥へ電気が通りやすくなります。刺激は非常になめらかで、治療感よりも「すっと入っていく心地よさ」を感じることが多くなります。痛みに対して敏感な患者や高齢者、皮膚の薄い部位の治療では特にメリットが大きく、不快な刺激を避けながら深部へアプローチしたい場面で強みを発揮します。
深い響きを必要としないケース、たとえば神経症状が強く、刺激で悪化させたくない場合や、筋緊張を穏やかに和らげたい場面でも使いやすい設定です。快適性が高く、長時間の治療でも負担が少ないため、患者が安心して施術を受けられる周波数帯といえます。

刺激の質

搬送周波数が上がるほど刺激は滑らかでやさしくなり、皮膚表面での不快感が減少します。5kHzでは刺激の存在感がしっかり出るのに対し、16kHzではほとんど痛みを感じずに深部へ通る印象が強くなります。

深達性

周波数が高いほど皮膚抵抗が小さくなり、深部への電流の通りが良くなります。特に10kHzと16kHzでは、深い筋層や関節包周囲へ電気を届けやすくなるため、深部アプローチを必要とする治療で有効です。

患者層との相性

強い刺激を好む患者には5kHz、刺激が苦手な患者や高齢者には10kHz・16kHzが適しています。症状だけでなく、患者の好みや不安の有無も周波数選択の重要なポイントになります。

効果を最大化するための搬送周波数の選び方

症状別の最適な周波数帯

搬送周波数の選択は、「どの組織にどのように働かせたいか」によって変わります。急性期で痛みが強い場合には、やさしい刺激が求められるため高めの搬送周波数が適しています。一方で、深い筋肉の硬さを取ることが目的であれば、ある程度刺激の存在感が必要になり、5kHzのような標準帯が向いています。治療周波数が効果の方向性を決めるのに対し、搬送周波数は刺激の入り方を整える役割を持つため、症状に応じて変えることで治療の質が大きく変わります。

急性期で刺激を抑えたい場合

急性期は組織が敏感になっているため、刺激を強くすると逆効果になることがあります。搬送周波数を10kHzや16kHzに設定すると、皮膚での刺激がほとんど出ず、やわらかい電気が深部まで届きやすくなります。痛みに対する不安が強い患者には、まず高搬送周波数を選ぶことで安心して施術を受けてもらいやすくなります。

深部アプローチを強めたい場合

深部の筋硬結や関節周囲のこわばりをねらいたい場合は、搬送周波数の特性を生かすことが重要です。10kHzや16kHzでは深達性が高く、皮膚表面での抵抗に邪魔されずに奥まで電気が通りやすくなります。治療周波数を変えなくても、搬送周波数を上げるだけで「どこまで届くか」が変わるため、深層筋の治療では大きなメリットがあります。

刺激過敏の患者に対応する場合

電気刺激が苦手な患者や高齢者では、表面のチクチクした感覚が負担になりやすい傾向があります。このようなケースでは16kHzのような高搬送周波数が非常に相性が良く、刺激への不安を軽減しながら効果的に治療を進められます。なめらかで痛みの少ない刺激は、リラックスした状態で治療を受けてもらえる点でも利点があります。

機種ごとの設定幅を活かす考え方

最近の干渉波治療器は、搬送周波数を細かく調整できるモデルが増えています。例えば5kHzから16kHzまで幅広く設定できる機種では、患者の状態や好みに合わせた細かな調整が可能です。治療効果を上げるには、単に周波数を上げるのではなく「どのくらいの刺激の質が適しているか」を考えながら設定していくことが重要になります。
機器の能力を十分に発揮させるためには、普段から周波数帯ごとの特徴に触れ、治療感の違いを把握しておくことが役立ちます。

臨床で迷ったときの判断基準

周波数を選ぶ際に迷ったときは、「目的」と「患者の反応」を基準に考えると判断しやすくなります。深部をねらうのか、刺激を弱めたいのか、響きを重視したいのかといった目的が明確であれば、自然と周波数の方向性が決まります。そのうえで、治療の初期段階では高めの搬送周波数から始め、患者の反応を見ながら調整していくと安全に治療効果を高められます。

搬送周波数の理解が深まるほど、同じ治療機器でも引き出せる効果が大きく変わります。症状の性質と刺激の受けやすさを考え、柔軟に周波数を選択することが、治療の質を高めるもっとも重要なポイントです。

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