保険診療に使用する機器でも補助金は活用できる?接骨院・鍼灸院が知っておくべき3つの注意点

ブログ監修者

プランナー

棚橋和宏
(たなはしかずひろ)

【保有資格】

医療経営士3級

整骨院の開業・運営にかかる費用を少しでも抑えたい、補助金を活用したいとお考えの方へ。
私は医療機器販売と補助金申請支援の経験を活かし、整骨院経営を資金面からサポートしています。
「自院が対象になるのか分からない」「申請手続きが不安」そんなお悩みに丁寧に寄り添い、最適な制度選びから申請サポートまで対応。
補助金を活用することで設備投資や差別化が可能となり、経営の安定化にもつながります。
まずはお気軽にご相談ください。先生の想いを形にするお手伝いをさせていただきます。

保険診療用の機器はなぜ補助金の対象外になるのか?

補助金制度の基本的な仕組みとは

補助金とは、国や自治体が中小企業や個人事業主の取り組みを支援するために交付する資金のことです。基本的には、経営の改善や新たなサービスの導入など、事業の前向きな成長を促すために支給されます。しかし、補助金には「公的資金である以上、営利目的の一部に該当するものは制限される」という前提があります。とくに医療・施術業界においては、保険制度との整合性が重視されるため、全ての設備費が対象になるわけではありません。

保険診療と自由診療の費用区分

接骨院や鍼灸院では、健康保険が適用される「保険診療」と、自費で支払われる「自由診療」があります。保険診療は国の制度に基づき、患者の負担を軽くするための仕組みですが、そのぶん施術内容や機器の使用範囲が厳しく定められています。一方、自由診療は施術者が独自に設定できるサービスであり、その内容や料金も自由です。補助金の申請においては、この「保険適用か自由診療か」が、機器購入が対象となるかどうかの分かれ目になります。

対象外とされる理由とその背景

保険診療に使用する機器が補助金の対象外とされる最大の理由は、「保険点数によって報酬が支払われる行為に対して、さらに公費での支援を重ねることは不適切」と考えられているからです。公費による二重支出の回避が重視されており、保険診療のために用いる電気刺激機器や温熱療法装置などの導入費用は原則として認められていません。この原則を理解しないまま申請を行うと、補助金が却下されたり、返金を求められるリスクもあります。

補助金が使える自由診療用機器とは?

自由診療に該当するサービスの例

自由診療とは、保険が適用されない自費で行う施術のことを指します。接骨院や鍼灸院であれば、美容鍼、姿勢改善プログラム、トリガーポイント治療、ハイボルテージ療法などがこれにあたります。これらのサービスは、施術内容や価格を院が独自に設定できるため、収益性の高いメニューとしても注目されています。また、近年では健康志向や美容目的で自費メニューを求める患者も増えており、自由診療の導入は経営上の大きな強みになります。

補助金対象となる機器の特徴

補助金の対象となる機器には共通した特徴があります。それは「新たなサービスの導入や業務の効率化につながる設備」であることです。たとえば、美容鍼に対応するフェイス専用EMS機器や、ハイボルテージ療法に用いる治療器、または身体の状態を測定できる姿勢解析装置などが該当します。これらの機器は、自由診療として活用する前提であれば補助対象となる可能性が高くなります。重要なのは、事前にその機器の用途を明確にし、申請書に自由診療での活用を記載することです。

活用事例:自由診療機器で補助金を受けたケース

実際に補助金を活用して自由診療用機器を導入した接骨院の事例としては、「美容目的の施術を導入するためにラジオ波の治療器を購入した」「アスリート向けのボディケアサービスを始めるために筋膜リリース装置を導入した」といったものがあります。これらのケースでは、申請時に「保険診療では使わない」「自由診療メニューの新設で使う」と明記することで、審査をクリアしています。このように、使用目的を明確にしておくことが、補助金採択の重要なポイントとなります。

接骨院・鍼灸院が補助金を活用する際の3つの注意点

機器の用途を明確にする

補助金申請の際、最も重要なのが「その機器を何のために導入するのか」を明確にすることです。たとえば、ハイボルテージ治療器を導入する場合、それを保険診療ではなく美容やパフォーマンスケアなどの自由診療目的で使うことをきちんと説明する必要があります。申請書に「自由診療としての新メニューに使用予定」と記載することで、審査側にも意図が伝わりやすくなります。

自由診療との明確な区別が必要

実際の運用でも、保険診療との併用が曖昧になると、補助金の目的外使用とみなされる可能性があります。そのため、スタッフのオペレーションやカルテ管理においても、**「この機器は自由診療専用である」**という区別を日常的に徹底しておくことが求められます。補助金を活用するからには、使用目的をぶらさず、導入後も正しく運用する姿勢が重要です。

事業計画書の書き方に注意

補助金を受けるには、単に「欲しい機器がある」と記すだけでは足りません。審査で重視されるのは、「なぜその機器が必要なのか」「どうやって活用し、どんな成果を出すのか」という計画性です。治療院の課題を明確にし、その課題を解決するためにこの機器が必要である、という流れで構成された事業計画が求められます。

補助対象経費の根拠を明確に

また、機器の金額に対しても「なぜこの価格で、なぜこの製品を選んだのか」という理由を添えることが理想的です。見積書の添付はもちろん、他の製品との比較や、導入により期待される売上や患者満足度の向上についても触れることで、説得力のある申請内容になります。

採択後の使途報告義務を理解する

補助金は採択されたら終わりではありません。導入後には報告書の提出や経費の実績報告が義務づけられています。「実際に購入したのか」「目的通り使われているか」などを記録し、証明する必要があります。記録や写真、患者説明用のメニュー表などを整備しておくと、報告の際にもスムーズです。申請前にこの流れを理解しておくことで、採択後の対応に慌てずにすみます。

自由診療機器導入による経営改善の可能性

売上の安定化と収益性の向上

自由診療用の機器を導入することで、保険診療に依存しない新たな収益源を確保できます。保険診療は点数制度に縛られ、報酬が一定ですが、自由診療は施術単価を自ら設定できるため、経営の柔軟性が格段に高まります。特にラジオ波機器やEMS機器、美容機器などは単価も高く、一定の利用者がつけば安定した収入源となります。これにより、売上の波を抑えながら、事業全体の利益率を向上させることが可能になります。

リピート患者獲得の仕組みづくり

自由診療では「一度きりの施術」ではなく、継続的な通院を前提としたサービス設計がしやすいという特長があります。たとえば、美容鍼やスポーツケアメニューなどは、定期的な施術が求められることが多いため、自然とリピートにつながりやすくなります。自由診療機器の導入は、単に売上を上げるだけでなく、リピーターを増やす仕組みづくりにも貢献します。

差別化戦略としての自由診療の強み

自由診療メニューは、周辺の競合院との差別化にも有効です。多くの接骨院・鍼灸院が保険診療中心である中で、付加価値のあるサービスを提供できれば、「ここにしかない施術」「専門性のあるケア」を求める新規患者の獲得にもつながります。とくに健康や美容への意識が高まっている現在、自由診療によって選ばれる治療院づくりを進めることは、長期的なブランディングにも効果を発揮します。

補助金を活用するために今すぐ始めたい準備

補助金の公募情報をチェックする方法

補助金の活用を考えるなら、まず「どのような補助金が、いつ公募されているのか」を知ることが重要です。情報収集の基本は、各自治体や中小企業庁、商工会議所などの公式サイトです。毎年同じ時期に公募されるものも多いため、スケジュールを常に把握しておくとスムーズです。また、GビズIDの登録を済ませておくことで、オンライン申請も効率的に行えるようになります。

補助金申請のための書類準備

申請には、事業計画書や見積書、確定申告書、履歴事項全部証明書など、さまざまな書類が必要になります。中でも事業計画書は、審査の合否に大きく影響しますので、重点的に準備すべき書類です。時間がかかるものもあるため、公募開始と同時に動き出すのではなく、余裕を持って下準備を始めておくのが理想です。書類の整合性や書き方の精度が、採択率を左右するといっても過言ではありません。

自院の診療体制の見直しと戦略立案

補助金を使って機器を導入するだけでなく、それをどう活かすかまで見据えることが大切です。たとえば、自由診療の比率を今後どのように高めていくか、どのターゲット層に向けて新しいサービスを提供するかといった戦略を立てることで、補助金の使い方に説得力が増します。また、スタッフへの研修体制や、院内オペレーションの整備も併せて考えると、補助金の効果がより大きく発揮されます。

LINE登録