接骨院・鍼灸院の個人事業主必見!スタッフの給料が最低賃金以上か確認する3ステップ

ブログ監修者

プランナー

棚橋和宏
(たなはしかずひろ)

【保有資格:医療経営士3級】

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なぜ接骨院・鍼灸院の個人事業主は最低賃金の確認が重要なのか

最低賃金法とは?接骨院・鍼灸院にも適用される理由

最低賃金法とは、すべての労働者に対して最低限支払わなければならない賃金額を国が定めた法律です。この法律は、業種や事業規模に関係なく、原則としてすべての労働者に適用されます。もちろん、接骨院や鍼灸院のスタッフも例外ではありません。

個人事業主であっても、アルバイトやパート、社員を雇用している場合は最低賃金法の適用対象となります。「うちは小さいから大丈夫」と思っていると、知らないうちに違反している可能性もあるため、注意が必要です。

最低賃金違反がもたらすリスク

最低賃金を下回る賃金を支払ってしまうと、思わぬリスクに直面することになります。金銭的なペナルティだけでなく、経営に大きな悪影響を及ぼすことも考えられます。

罰金や未払い賃金の支払い義務

最低賃金に違反した場合、地域別最低賃金では最大50万円、特定産業別最低賃金では最大30万円の罰金が科される可能性があります。また、違反が発覚すると、スタッフに対して未払い賃金の差額をさかのぼって支払わなければなりません。これは過去数年分にわたる可能性もあり、資金繰りを圧迫する要因になりかねません。

労働基準監督署の調査リスクと企業イメージの低下

最低賃金違反は、労働基準監督署による立ち入り調査のきっかけにもなります。調査が入れば、他の労務管理上の問題まで指摘されるリスクが高まります。さらに、違反事実が外部に広まれば、患者や地域社会からの信頼を失い、経営継続が難しくなることもあります。特に、SNSでの情報拡散リスクは無視できません。

スタッフの給料が最低賃金以上か確認する3ステップ

ステップ1|給与形態ごとの最低賃金換算方法を理解する

接骨院・鍼灸院では、時給制、日給制、月給制、歩合給制など、スタッフごとに給与形態が異なるケースも珍しくありません。そのため、まずは給与形態ごとの最低賃金換算方法を正しく理解することが重要です。

時給制であれば支払われている時給と最低賃金額を直接比較します。日給制の場合は、日給を1日の所定労働時間で割って時給に換算します。月給制の場合は、月給を1か月の平均所定労働時間で割って時給を算出し、比較します。歩合給制なら、総支給額を実際の労働時間で割り、時間あたりの賃金を確認する必要があります。

どの給与形態でも、「最終的に時給換算して比較する」という考え方が共通しているため、ここを押さえておきましょう。

時給制・日給制・月給制・歩合給それぞれの計算方法

  • 時給制:支払われている時給がそのまま比較対象
  • 日給制:日給 ÷ 所定労働時間(例:日給8,000円 ÷ 8時間=1,000円)
  • 月給制:月給 ÷(年間所定労働日数×1日の所定労働時間÷12か月)
  • 歩合給制:支払総額 ÷ 総労働時間(例:支給20万円 ÷ 200時間=1,000円)

このように、給与体系によって最低賃金確認の計算式が異なりますので、スタッフごとに適切に判断しましょう。

ステップ2|手当を正しく除外して計算する

次に注意したいのが、最低賃金の計算に含めるべき金額と除外すべき金額を正確に区別することです。手当には最低賃金の計算対象外となるものが存在するため、これを含めてしまうと正しい判断ができません。

例えば、通勤手当や時間外勤務手当、家族手当などは最低賃金の対象に含まれません。基本給や職務手当など、毎月支払われる賃金のみを対象として計算することが求められます。

最低賃金の対象外となる手当とは?

最低賃金に含めてはいけない代表的な手当は次の通りです。

  • 通勤手当
  • 家族手当
  • 時間外勤務手当
  • 休日出勤手当
  • 深夜勤務手当
  • 賞与(ボーナス)
  • 結婚祝金などの臨時的な手当

これらを除外した後の「本当に働いた対価」に基づいて最低賃金以上かを確認する必要があります。

ステップ3|実際にスタッフ別に時給換算して比較する

最後に、実際のスタッフごとに時給換算を行い、所在地の最低賃金額と比較します。このとき、労働局が公表している最新の地域別最低賃金額を必ず確認しましょう。最低賃金は年に1回程度改定されるため、過去のデータで判断すると違反になるリスクがあります。

計算例:月給制スタッフの場合

仮に、基本給150,000円+職務手当30,000円、通勤手当5,000円、時間外手当35,000円だった場合、通勤手当と時間外手当を除いた180,000円が対象になります。

これを、年間250日×8時間÷12か月=約166時間で割ると、時給は約1,084円となります。地域の最低賃金が1,000円であれば、問題ないと判断できます。

計算例:歩合給スタッフの場合

ある月の支給総額が168,000円、労働時間が200時間だった場合、168,000円÷200時間=840円になります。地域の最低賃金が950円の場合、最低賃金未満となり、改善が必要になります。

こうした具体的な計算を通じて、すべてのスタッフが最低賃金以上になっているか、正確にチェックしていきましょう。

最低賃金の確認でよくあるミスと注意点

手当を含めて計算してしまう

最低賃金を確認する際に最も多いミスの一つが、手当を含めた金額で計算してしまうことです。たとえば、通勤手当や時間外手当など、最低賃金の対象外となる手当まで合算して「うちは大丈夫」と判断してしまうケースが見受けられます。

しかし、最低賃金の確認では、基本給や定期的な職務手当のみを対象にしなければなりません。対象外の手当を含めた金額で比較してしまうと、実際には最低賃金を下回っていたという重大なミスにつながるため、必ず正確に除外して計算しましょう。

所定労働時間の認識ミス

もう一つ注意したいのは、所定労働時間の取り扱いミスです。最低賃金を月給や日給から計算する際には、年間所定労働日数や1日の所定労働時間を正しく把握する必要があります。

たとえば、1日8時間労働を基本とする場合でも、昼休憩時間を除外して7.5時間労働とされていることもあります。こうした微妙な違いを見落としてしまうと、時給換算額がずれてしまい、最低賃金を下回っていたという結果になりかねません。

常に正確な労働時間を基準にして、時給換算を行うことが重要です。

賃金改定後に最低賃金が引き上がっていることを見落とす

最低賃金は、国や各都道府県によって毎年見直されます。一般的には10月頃に改定されることが多く、最近では1年ごとに30円〜50円程度の引き上げが続いています。

この改定情報を見落としたまま、以前の最低賃金額を基準に給与を設定していると、知らないうちに違反してしまうリスクがあります。給与体系は一度設定して終わりではなく、最低賃金改定のタイミングで必ず見直しを行いましょう。

最新の最低賃金情報は、厚生労働省や各都道府県労働局のウェブサイトで確認することができますので、定期的なチェックを習慣化することが大切です。

最低賃金チェック後にすべき対応策とは

最低賃金を下回っていた場合の是正方法

万が一、スタッフの給料が最低賃金を下回っていた場合は、迅速に対応する必要があります。まずは、対象となるスタッフに対して、未払い分の賃金差額を支払う手続きを進めましょう。このとき、過去にさかのぼって支払う必要があるため、いつから最低賃金を下回っていたのかを正確に調査することが大切です。

差額支払いが完了したら、速やかに今後の給与額を最低賃金以上に修正します。これにより、労働基準監督署からの是正勧告や罰則を回避できる可能性が高まります。スタッフにも誠意を持って説明を行うことで、信頼関係の維持にもつながります。

今後のリスクを防ぐための運用体制づくり

最低賃金違反を防ぐためには、一時的な対応だけでなく、今後も継続的にチェックできる体制づくりが必要です。給与体系の見直しや内部ルールの整備を行い、リスクを最小限に抑えましょう。

賃金設定と契約内容の見直し

まず、スタッフとの労働契約書を確認し、基本給や手当の内訳が明確に記載されているかを見直します。最低賃金改定に備えて、契約書に「地域別最低賃金の改定に応じて給与を見直す」旨の条項を盛り込むと、後々のトラブル防止に役立ちます。

さらに、歩合給や出来高払いの場合も、最低賃金を下回らないよう保障給の設定を検討すると安心です。スタッフに安心して働いてもらうためにも、契約内容を明確かつ柔軟に整備していきましょう。

定期的な最低賃金チェックのすすめ

最低賃金の改定は年に1回行われるため、少なくとも年に一度は賃金体系を見直すことを習慣にするべきです。厚生労働省や各地の労働局が発表する最低賃金改定情報をチェックし、変更があった場合は早めに社内で対応を進めましょう。

また、給与計算を外部に委託している場合でも、自院の責任として最低賃金のチェックは必ず自分たちでも行うべきです。こうした日常的なチェック体制を整えることで、リスクを未然に防ぐことができ、安心して経営に専念できる環境が整います。

まとめ|スタッフ管理の不安を解消し、安心できる院経営を目指そう

接骨院・鍼灸院の個人事業主にとって、スタッフの給料が最低賃金を下回っていないかを正しく確認することは、経営リスクを防ぐうえで欠かせない取り組みです。給与形態ごとの換算方法を理解し、最低賃金に含めるべき手当と除外すべき手当を正確に把握しながら、定期的にチェックを行うことが大切です。

仮に最低賃金を下回っていた場合も、速やかに差額を支払い、給与設定を見直すことで、大きなトラブルに発展するのを防ぐことができます。さらに、賃金体系や契約内容を整備し、最低賃金改定に対応できる運用体制を築くことが、今後の安心経営につながります。

スタッフが安心して働ける環境を整えることは、院の信用力向上や患者満足度の向上にも直結します。最低賃金チェックを単なる義務と考えるのではなく、院の成長につなげるチャンスととらえ、積極的に取り組んでいきましょう。

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