接骨院・鍼灸院の「利益」ってどう考える?仕入れが少ないビジネスの基本とコツ5選

ブログ監修者

プランナー

棚橋和宏
(たなはしかずひろ)

【保有資格:医療経営士3級】

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利益率ってなに?接骨院・鍼灸院が知っておくべき基本

利益率とは?簡単にわかる基本の式

利益率とは、売上に対してどれだけの利益が出ているかを表す数字です。たとえば、100万円の売上があって、その中から20万円の利益が出た場合、利益率は20%になります。計算式で表すと「利益 ÷ 売上高 × 100」で求めることができます。この数字が高いほど、効率よく利益を出している経営といえます。

接骨院や鍼灸院のようなサービス業では、商品を仕入れる必要が少ないため、売上に占める経費の割合が利益に直結しやすいのが特徴です。そのため、利益率をしっかりと理解することで、自分の院の経営状態が「儲かっているのか」「無駄が多いのか」を客観的に把握することができます。

接骨院・鍼灸院における利益の特徴

接骨院や鍼灸院では、物を売る商売ではなく、施術という“時間と技術”を提供することが収益の柱です。そのため、売上のうち多くを占めるのが人件費や家賃、水道光熱費などの固定的な経費になります。特に、仕入れがほとんどないという特性から、コスト構造が非常にシンプルで、経費の管理が利益率に強く影響します。

また、保険診療と自由診療の比率によって利益構造も変わります。自由診療の割合が高ければ単価が上がりやすく、そのぶん利益率も向上しやすくなります。一方で、保険診療中心の場合は施術単価が低いため、回転率や経費の最小化が重要になります。

利益率が経営に与える影響とは?

利益率が低い状態が続くと、たとえ売上が上がっていたとしても、手元にお金が残りません。経営者が安心して経営を続けるには、売上だけでなく「いくら残せているか」が重要になります。逆に、利益率が高ければ、高額な広告を出さなくても一定の売上でしっかり黒字を出せるようになります。

また、利益率が安定していると、スタッフの待遇改善や設備投資にも余裕ができ、結果として患者満足度やリピート率の向上にもつながります。つまり、利益率を理解することは、自院を長く続けるための土台づくりなのです。

なぜ利益が出ない?接骨院・鍼灸院に多い3つの経営課題

人件費が利益を圧迫している

接骨院や鍼灸院では、施術スタッフや受付などの人件費が経費の中で大きな割合を占めています。とくに開業初期や売上が安定しない時期には、スタッフの給与が経営を圧迫することも少なくありません。売上が増えていないのに人件費が増えると、当然ながら利益は残らなくなります。

このような状況を防ぐためには、人員配置の見直しや業務の効率化が必要です。例えば、予約制を導入することで施術の無駄を減らし、スタッフのシフトも最適化できます。忙しい時間帯に集中して人を配置するなど、無駄のない働き方を設計することが利益率の改善に直結します。

集客が不安定で売上が安定しない

利益を出すには、まず安定した売上が必要です。しかし多くの院では、来院数が週によってバラついたり、季節や天候によって患者数が大きく変動したりすることがあります。このように集客が安定しないと、収益の見通しが立てにくくなり、経営にも不安が残ります。

広告やチラシだけに頼らず、SNSやLINE、ホームページなどを活用して継続的な情報発信を行うことで、患者との接点を維持することが大切です。また、既存患者への定期フォローやリピート促進も、売上の安定につながる有効な手段です。

固定費(家賃・光熱費など)の見直し不足

家賃や電気・ガス・水道などの固定費は、一度契約すると見直されにくい経費です。しかし、こうした経費が実は利益を圧迫しているケースは多くあります。とくに立地に対して家賃が高すぎたり、開業時のまま契約を続けていたりする場合は注意が必要です。

一度立ち止まって、家賃や光熱費の見直しを行うだけでも、月々の経費に差が出ます。不要な照明の削減や空調の管理、契約プランの変更など、すぐに取り組める対策から実践していくことで、少しずつ利益を守ることができます。

利益率を改善するには?仕入れが少ないビジネスならではの考え方

接骨院・鍼灸院の経費構造を把握しよう

主な経費の割合と目安(人件費・家賃・広告費)

接骨院や鍼灸院のように、仕入れが少ないビジネスでは、人件費や家賃といった“固定費”が経費の中心になります。日本政策金融公庫のデータなどによれば、一般的な接骨院の経費構造の目安は以下のとおりです。

  • 人件費:40%前後
  • 家賃:10%前後
  • 広告費:3〜5%程度

このように、仕入れコストがない分、固定費のバランスがそのまま利益に直結します。まずは、自院の経費の内訳を洗い出し、平均的な目安と比較することで、どこに無駄があるかを把握することが第一歩です。

見落としがちなコストとは?

固定費だけでなく、意外と見落とされがちな経費にも注意が必要です。たとえば、印刷物の外注費、古い業務用機器のメンテナンス費、効果の薄い広告契約などです。これらの費用は少額でも、積み重なると年間で大きな負担になります。

また、院内の物品や備品を毎月何となく発注している場合も要注意です。定期的に見直すことで、不要な支出を減らし、利益を確保する余地が生まれます。

原価がかからないからこそ意識すべき「付加価値」

接骨院や鍼灸院は、仕入れを必要としないビジネスですが、その分「付加価値」で差別化を図る必要があります。つまり、他院とは違う“理由”を患者に提供できるかが、利益率を高めるカギになります。

例えば、オーダーメイドの施術プラン、カウンセリングの丁寧さ、院内の清潔感や居心地の良さといった、目に見えない価値が患者の満足度につながります。結果としてリピート率が上がり、広告費をかけずに安定した売上が見込めるようになります。

安さや数ではなく、「あなたの院でなければ」という信頼を得ることが、利益率改善においてとても重要なのです。

利益を増やすための5つの実践的な工夫

工夫1:人件費を最適化する

接骨院・鍼灸院の経費の中でも最も大きな割合を占めるのが人件費です。必要以上にスタッフを雇っていたり、業務の分担が非効率だったりすると、利益が出にくくなります。まずは、患者数に対して適正な人員配置ができているかを見直すことが重要です。

たとえば、予約制を強化すれば、患者が集中する時間帯にスタッフを集中的に配置でき、無駄な人件費を削減できます。また、受付業務の一部をシステム化することで、業務負担を軽減し、少人数での運営も可能になります。

工夫2:サービスメニューを見直す

提供している施術メニューが“時間単価”に見合っているかどうかも、利益率に大きく影響します。施術時間が長い割に料金が安いメニューが多ければ、効率が悪く、利益が残りにくくなります。

定期的にメニューの見直しを行い、時間単価が高く、需要のあるメニューに注力することが利益率アップの鍵です。また、オプションメニューやコース制を導入することで、客単価を自然に引き上げることも可能です。

工夫3:リピート率を上げる仕組みづくり

新規の患者を集めるよりも、既存の患者に何度も通ってもらう方が、コストもかからず利益率を高めやすいです。リピート率を上げるには、施術後のフォローや次回予約の促しが効果的です。

例えば、次回の施術タイミングをその場で提案したり、来院後にLINEでメッセージを送ったりするだけでも、通院の習慣化につながります。通いやすい雰囲気づくりや、安心して任せられるという信頼感の積み重ねが、安定した経営を支えてくれます。

工夫4:SNSと口コミで集客を強化

広告費をかけずに集客を強化する手段として、SNSや口コミの活用は非常に有効です。とくに地域密着型の接骨院・鍼灸院にとっては、患者との距離感を縮めるツールとしてSNSは大きな力を持ちます。

たとえば、Instagramで院内の雰囲気や施術の流れを発信したり、患者の声をストーリーで紹介したりすると、新規の来院ハードルが下がります。またGoogleビジネスプロフィールで口コミを集めることで、検索経由での新規流入も期待できます。

工夫5:自由診療や物販の導入を検討する

保険診療だけでは単価が低く、利益率が上がりにくい傾向があります。そこで、自由診療や関連商品の販売を組み合わせることで、収益の柱を増やすことができます。

たとえば、鍼灸や美容メニューを導入したり、自宅ケア用のテーピングやサポーターを販売したりすることで、1人あたりの売上を上げることが可能になります。無理に売り込むのではなく、患者の悩みに寄り添った提案を心がけることで、信頼を損なわずに利益アップが図れます。

今日から始められる利益率アップの第一歩

まずは現状の利益率を“見える化”しよう

利益率を改善するために最初にすべきことは、いまの自院の利益がどれくらい出ているのかを数字で把握することです。「なんとなく黒字だから大丈夫」と思っていても、実際に計算してみると、利益がほとんど残っていないケースは少なくありません。

売上から経費を差し引いて、いくら残っているのかを毎月確認する習慣を持ちましょう。エクセルや会計ソフトを使えば、収支の流れも整理しやすくなります。まずは「利益率」という言葉を、毎月の経営判断の指標として取り入れることが、改善への第一歩です。

小さな改善を積み重ねていく考え方

利益率を上げると聞くと、大きな改革が必要だと感じるかもしれません。しかし、実際には小さな改善の積み重ねが最も効果的です。たとえば、不要な備品を買わない、電気代を抑えるためにLED照明に変える、チラシの印刷部数を見直すなど、すぐにできることは意外とたくさんあります。

一つひとつは小さなことでも、1年単位で見れば大きな経費削減につながります。利益率の改善は一度で完了するものではなく、日々の意識と行動の積み重ねが成果を生むのです。

経営に役立つ情報を継続的に学ぶには?

日々の施術に追われていると、経営について学ぶ時間が取れないという声もよく聞きます。しかし、少しの時間でも経営に関する知識を取り入れることは、利益率を改善するうえで非常に重要です。

おすすめは、業界専門誌やブログ、YouTubeなどでスキマ時間に情報収集することです。また、同じ地域や業界の経営者とつながることで、リアルな成功例や課題も共有できます。経営は孤独になりがちですが、外からの視点を取り入れることで新しい気づきが得られます。
休みの日に3時間費やすのは難しいですが、30分を6日間続けても延べ時間は同じです。
無理なく少しずつでも、継続すれば大きな変化となります。

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