接骨院・鍼灸院向け|固定費と変動費が経営に与える影響と収支改善のコツ
ブログ監修者

プランナー
棚橋和宏
(たなはしかずひろ)
【保有資格:医療経営士3級】

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Contents
固定費と変動費の基本を理解しよう

固定費とは?売上に関係なく発生する費用
固定費とは、接骨院・鍼灸院の売上や患者数に関係なく、毎月決まって発生する費用のことです。たとえ来院者がゼロであっても必ず発生するため、経営上の負担となりやすい特徴があります。
たとえば、正社員スタッフの給与、テナントの家賃、備品リース料などは、院の稼働状況にかかわらず毎月支払わなければならない費用です。これらは「固定」であるがゆえに、売上が落ち込んだ際に経営を圧迫しやすい存在です。
経営が安定しているときにはあまり意識されませんが、売上が下がったときにこそ固定費の重みが経営にのしかかってきます。そのため、日頃から把握しておくことが重要です。
変動費とは?売上に応じて増減する費用
一方、変動費は売上や患者数に比例して変動する費用です。施術に必要な材料費、広告成果報酬、外注作業にかかる費用などが該当します。
たとえば、自費メニューで使用する美容鍼の鍼材やジェルなどは、施術件数に応じて仕入れが発生するため典型的な変動費です。また、歩合制で支払うスタッフの報酬や、成果型のWEB広告費などもこれに含まれます。
売上が増えればそれに応じて支出も増えますが、逆に売上が下がれば支出も減るため、経営へのダメージは限定的です。変動費は経営リスクの分散に役立つ一方で、使い方によっては利益を削ってしまうこともあるため、管理が欠かせません。
費用を分類するメリットとは
固定費と変動費を明確に分類することは、経営改善の第一歩です。費用構造を正しく把握できれば、「どの支出が経営を圧迫しているのか」「どこを見直すべきか」がはっきりします。
たとえば、固定費が高すぎて身動きが取れない状態なら、家賃交渉やリース契約の見直しなど、戦略的な改善が可能になります。一方で、変動費の中でも無駄があれば、必要な費用とそうでないものを精査して支出を最適化することができます。
こうした分類と見直しの積み重ねが、最終的には収益力の向上と経営の安定につながっていきます。
接骨院・鍼灸院の固定費・変動費の具体例

接骨院・鍼灸院の主な固定費一覧
人件費・家賃・リース料など
接骨院や鍼灸院の経営において、最も大きな割合を占める固定費は「人件費」です。特に正社員や常勤スタッフを雇用している場合、施術の有無にかかわらず毎月一定額の給与を支払う必要があります。また、スタッフの社会保険料や賞与なども固定費に含まれます。
次に大きな項目が「家賃」です。テナントとして施設を借りている場合は、月額で家賃が発生し、たとえ来院者が少なくても支払いは免れません。さらに、治療機器や事務機器のリース料も毎月発生する固定費として計上されます。
こうした費用は売上と関係なく発生するため、過剰になりすぎると経営の柔軟性を失うリスクがあります。特に開業間もない院や、売上が不安定な時期には注意が必要です。
接骨院・鍼灸院の主な変動費一覧
仕入れ費・外注費・広告の成果報酬など
変動費として代表的なのは、施術に必要な「消耗品」の仕入れ費です。例えば、テーピング材、鍼、アルコール綿、衛生用品などは、患者数に応じて消費されるため、来院者が多い月には仕入れも増えます。
また、ホームページ制作や集客を外部業者に依頼している場合の「外注費」や、「成果報酬型のWEB広告費」なども変動費に分類されます。これらは施策の成果や稼働量によって支払額が変わるため、売上と連動しやすいのが特徴です。
歩合制で報酬を支払う非常勤スタッフの給与も、施術数に比例するため変動費に含まれます。こうした費用はコントロールしやすく、急な売上減少時にも柔軟に対応できるため、経営を安定させる上で重要な位置を占めます。
経営に与える影響とは?固定費と変動費の違いを押さえる

売上が減っても発生する固定費のリスク
固定費の最大のリスクは、売上が落ち込んでも必ず発生するという点にあります。たとえば、繁忙期には黒字でも、閑散期になると固定費をまかなえず赤字に転落するというケースは珍しくありません。
特に、家賃や人件費は月々の支出額が大きく、収入が減っても簡単に削減できないため、経営の足かせになりやすいのです。スタッフを抱えている院では、施術が少ない日でも同じ人件費がかかるため、利益率が大きく下がってしまうこともあります。
このように、固定費の割合が高い経営は、売上が少し下がっただけでも一気に赤字へ転落する危険性を常に抱えているのです。
利益率に大きく関わる変動費のコントロール
一方、変動費は売上に応じて増減するため、経営リスクの面では比較的コントロールしやすい費用です。しかし、使い方を誤ると利益率を圧迫してしまう要因にもなります。
たとえば、患者数に対して過剰な仕入れを行ってしまったり、費用対効果が薄い広告に出稿し続けたりすると、売上が増えても利益が残りにくい状況になります。また、外注費が高くなりすぎると、業務を外部に任せたメリットがコストに打ち消されてしまうこともあります。
変動費は「使い方次第」で経営の強みになる反面、油断すると無駄遣いの温床にもなり得るため、定期的な見直しとバランスが求められます。
売上に対する費用割合を見直す重要性
固定費と変動費を分類すること以上に大切なのは、売上に対してそれぞれがどのくらいの割合を占めているかを定期的にチェックすることです。
たとえば、固定費が売上の70%以上を占めていれば、残り30%の中から変動費を支払い、さらに利益を出す必要があります。これでは余裕のない経営になってしまいます。理想は、固定費+変動費を合わせても売上の70%以下に収め、残りの30%を利益と再投資に回せる構造を目指すことです。
この費用バランスを意識することで、単なる支出削減ではなく、「戦略的なコスト配分」が可能になります。
利益改善に向けた費用の見直しポイント

固定費削減のためにできること
固定費は変動させにくい支出ですが、だからこそ一度見直すことで大きな改善効果が期待できます。たとえば、人件費については、勤務時間帯の調整や業務効率化によって人員配置を最適化することが可能です。また、パートやアルバイトの活用によって、必要な時間帯だけの戦力補充も検討できます。
家賃については、立地条件と集客効果のバランスを見直すことで、同等の売上が見込めるエリアへの移転や、契約内容の再交渉を通じた賃料の引き下げも選択肢の一つです。加えて、保険や通信費など、見落とされがちな固定支出にも無駄が潜んでいることがあります。
固定費は一度削減できれば、その効果は毎月継続して現れます。定期的なチェックと改善を行い、「必要最低限で最大効果を出せる経営」に近づけていきましょう。
変動費を賢く使うための考え方
変動費はコントロールしやすい分、意識的に運用することで利益率を高めることができます。まずは、何にどれだけ使っているのかを把握し、費用対効果が見合っているかを評価しましょう。
たとえば、広告費については、媒体別の効果測定を行い、反応の良いチャネルに集中投下するのが基本です。また、仕入れ費も在庫ロスを減らすことで無駄な支出を防ぐことができます。施術ごとの材料コストを細かく分析することで、コストパフォーマンスに優れた施術メニューを絞り込むことも可能です。
変動費は「使うこと」そのものが悪ではなく、「どう使うか」が問われる支出です。利益に直結する使い方を日々意識することが、経営改善への近道となります。
数字を見える化して意思決定に活かす方法
どれだけ費用を見直しても、それを把握し活用できなければ意味がありません。そこで大切なのが「数字の見える化」です。まずは、月次の損益計算書を必ず作成し、固定費と変動費の割合、売上に対する利益率などを把握しましょう。
エクセルなどの管理表でも構いませんが、最近では中小事業者向けのクラウド会計ソフトも多く存在し、月々の集計や分析を自動化できます。数字の動きが視覚的にわかれば、どこを改善すべきかがはっきりし、経営判断もスピードアップします。
直感に頼る経営から、数字に基づく意思決定へとシフトすることで、事業の安定性と成長性が大きく変わっていくはずです。
まとめ|数字に強い経営者になるために

収支構造を知ることが安定経営の第一歩
接骨院・鍼灸院の経営では、施術技術だけでなく「数字を読む力」がますます求められるようになっています。その第一歩が、自院の収支構造を正確に把握することです。固定費と変動費を明確にし、それぞれの割合と推移を知ることが、利益を確保するための土台となります。
どんぶり勘定で経営していては、せっかくの売上も無駄な支出に消えていきかねません。まずは「自院がどれだけ使い、どれだけ残っているか」を知ることから始めましょう。
固定費・変動費を意識した経営で利益体質へ
固定費は必要最小限に抑え、変動費は費用対効果を意識して使う。この基本的な考え方を持つだけで、経営の質は大きく変わります。特に、定期的に見直すクセをつけておくことで、経営の無駄を早期に発見しやすくなります。
収益性を高めるためには、「施術を増やす」だけでなく、「コストを最適化する」という視点が不可欠です。施術とお金、両方に目を向けられるバランスの取れた経営が、地域で長く愛される院づくりにつながります。
定期的な見直しが院の未来を左右する
経営環境は常に変化しています。家賃の相場、材料の仕入れ価格、広告媒体の費用対効果など、外部要因も含めて収支は変動します。そのため、一度見直して終わりではなく、「定期的な経営の棚卸し」が重要です。
半年に一度でも構いません。数字を振り返り、改善点を見つけ、少しずつでも対応していくことが、継続的な成長を可能にします。数字に強い経営者になることは、結果として「院の未来を守る力」になるのです。