補助金要件で頻出の「労働生産性」とは?計算方法と具体例でわかる実務対策
ブログ監修者

プランナー
棚橋和宏
(たなはしかずひろ)
【保有資格:医療経営士3級】

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Contents
労働生産性とは?補助金申請で注目される理由

労働生産性の基本的な意味とは
労働生産性とは、働いた時間や人数に対して、どれだけの成果を生み出したかを示す指標です。言い換えると、「どれくらい効率よく利益や価値を出せたか」を測るものといえます。この成果には、商品やサービスの提供だけでなく、付加価値と呼ばれる「利益につながる活動」が含まれます。
例えば、従業員1人が月に100万円の利益を生み出すのと、50万円しか生み出せない場合では、前者の方が生産性が高いということになります。
なぜ補助金要件に労働生産性が関係するのか
多くの補助金制度では「事業の発展性」や「効果の持続性」が問われます。ここで評価されるのが、まさに労働生産性です。国や自治体は、支援した企業がその後も安定して成長していくことを期待しているため、生産性の向上を計画に盛り込むことが求められるのです。
多くの補助金では、「生産性をどう高めるか」「それによってどんな効果があるか」が審査の重要なポイントとなります。
労働生産性が評価される背景と国の方針
日本は少子高齢化により、働く人の数が減少傾向にあります。そうした中で、限られた労働力でより多くの成果を出すことが国全体の課題となっています。そこで政府は、生産性の向上に取り組む企業に対して積極的に支援する方針を打ち出しています。
このため、補助金の申請においても「労働生産性をどう改善するか」が重要なアピールポイントになるのです。経営者がこの観点を理解していれば、申請内容にも説得力が増し、採択の可能性も高まります。
労働生産性の正しい計算方法と具体的な活用例

一人あたり労働生産性の計算式と考え方
一人あたりの労働生産性とは、従業員1人がどれだけの付加価値を生み出しているかを示す数値です。計算式はとてもシンプルで、以下のようになります。
労働生産性(人あたり)= 付加価値 ÷ 従業員数
ここでいう「付加価値」とは、売上高から外注費や原材料費などを差し引いた金額を指します。つまり、会社が本当に稼いだ価値です。この指標を使うことで、売上だけでは見えにくい「効率の良さ」を客観的に把握できます。
実際の数値例で見る計算方法
たとえば、ある整骨院が年間の売上高1,500万円で、仕入や外注費が500万円だったとします。従業員数が3人の場合、次のように計算します。
- 付加価値:1,500万円 − 500万円 = 1,000万円
- 労働生産性:1,000万円 ÷ 3人 = 約333万円/人
このようにして、1人あたりの年間貢献度を可視化することができます。
時間あたり労働生産性の算出方法
もうひとつの指標が、時間あたりの労働生産性です。これは、労働時間に対してどれだけの価値を生んだかを見るものです。
労働生産性(時間あたり)= 付加価値 ÷ 総労働時間
たとえば、上記と同じ1,000万円の付加価値を、年間合計6,000時間で生み出していたとすると、
- 労働生産性:1,000万円 ÷ 6,000時間 = 約1,666円/時間
この数値が高ければ高いほど、効率的に働いていると評価されます。
総労働時間の定義と注意点
総労働時間には、社員・パート・アルバイトすべての勤務時間が含まれます。正確に算出するには、勤怠記録を整備しておく必要があります。ここがずさんだと、生産性の計算自体が不正確になり、補助金の審査にも悪影響を与えるおそれがあります。
中小企業での労働生産性データの活かし方
労働生産性は、単に補助金の申請時に使えるだけでなく、自社の経営状況を客観的に見る材料としても有効です。たとえば、施術者ごとの生産性を見て配置や教育の方針を立てたり、特定の時間帯の収益性を見てシフトを最適化したりできます。
また、改善前と改善後の数値を比較することで、補助事業による効果を数字で示せるようになります。これにより、事後報告や次回申請時の説得力が大きく向上します。
補助金申請における労働生産性の評価ポイント

助成金・補助金における生産性要件とは
多くの補助金制度では、申請にあたって「労働生産性の向上」を計画に盛り込むことが求められます。とくに中小企業庁や厚生労働省が実施する助成制度では、生産性を高める取り組みが必須条件となっているケースも珍しくありません。
例えば「業務改善助成金」では、「事業場内最低賃金を一定額以上引き上げる」ことと同時に、「生産性向上のための設備導入や業務効率化」がセットで求められます。つまり、生産性の改善があってこそ補助対象と認められるのです。
申請時には、現状の労働生産性と今後の改善見込みを数字で示すことができると、より信頼性が高まります。
採択される事業計画に共通する特徴
採択されやすい申請書の多くには、「生産性がどう上がるか」が明確に記載されています。ただ「新しい機械を入れます」と書くだけでは弱く、導入によって何人の作業時間が短縮できるのか、何件の対応件数が増えるのか、といった具体的な成果を盛り込むことが重要です。
また、導入前後の生産性数値(予測でも可)を示すことで、申請者の計画性や効果の見込みが伝わります。審査する側にとって、「この事業はしっかり考えられていて、成果が出そうだ」と思わせるかどうかが大きな評価ポイントです。
よくある申請書類の記載ミスと注意点
労働生産性に関する申請内容でよく見られるミスには、以下のようなものがあります。
- 数値の根拠が不明確(「だいたい◯%アップ」と曖昧な表現)
- 「労働生産性」と「売上の伸び」を混同している
- 総労働時間や従業員数が正しく記載されていない
こうしたミスがあると、「効果が不透明」「実現性が低い」と判断され、審査で不利になる可能性があります。申請時には、過去の勤怠データや売上データを基に、できるだけ正確な数値を用いるようにしましょう。
中小企業や接骨院で取り組める労働生産性向上の方法

設備投資による省力化の実例
労働生産性を高めるための代表的な方法が、設備投資による省力化です。たとえば接骨院であれば、電気治療器や超音波治療器のような物療機器を導入することで、施術の効率が上がり、同じ時間内でより多くの患者に対応できるようになります。
このような設備の導入は、スタッフの身体的負担を軽減しつつ、患者の満足度も向上させる効果があります。さらに、補助金制度を活用すれば初期費用を抑えて導入できるため、コストパフォーマンスの高い改善策といえるでしょう。
ITツール導入による業務効率化
予約管理や会計処理、カルテの記録など、手作業で行っている業務をITツールに置き換えることも、生産性向上に大きく貢献します。たとえば、クラウド型の予約システムを導入することで、受付業務の手間が減り、ダブルブッキングやキャンセルの管理もスムーズになります。
また、レセプト業務や経理を効率化するソフトを活用することで、バックオフィスの労働時間を削減でき、その分を施術や患者対応に集中する体制が整います。
スタッフ教育と作業標準化の効果
意外と見落とされがちですが、スタッフの教育や業務の標準化も労働生産性の向上には欠かせません。新人やパートスタッフでも一定の品質で対応できるよう、施術や受付のマニュアルを整備しておくと、業務の属人化が防げます。
また、スタッフが必要な知識や技術をしっかり身につけていれば、患者対応の質も向上し、リピート率の改善にもつながります。これらの取り組みは時間とコストを要するものの、中長期的には組織全体の効率と安定した成長に大きく貢献します。
まとめ|労働生産性を理解し補助金申請を有利に進めよう

労働生産性を正しく伝えることが第一歩
補助金の申請で重視される労働生産性は、単なる「作業効率」ではなく、経営の健全性や将来性を示す指標です。事業計画書の中で、自社の労働生産性の現状と改善目標を明確に伝えることで、審査担当者に対して説得力を持った申請が可能になります。
まずは自社の付加価値や従業員数、労働時間を整理し、数字に基づいた客観的な説明ができるようにしましょう。
自社に合った改善施策を明確にしよう
労働生産性の向上に取り組む際は、自社にとって無理なく実行できる施策を選ぶことが重要です。高価な設備を導入するだけでなく、ITツールの活用や業務の見直し、スタッフ教育といった地道な取り組みも、確かな成果につながります。
補助金を活用することで、これらの改善活動を加速させることができます。事前の準備をしっかり行えば、投資リスクを抑えつつ大きなリターンを狙うことも可能です。
制度の目的を理解して申請書に反映させる
補助金制度には、それぞれに目的があります。たとえば生産性向上、地域経済の活性化、雇用の安定などです。申請書では、こうした制度の目的と自社の事業計画が一致していることを明示することが大切です。
単に「機械を買いたい」「経費が足りない」という理由ではなく、「生産性を高めて地域に貢献する」「スタッフの働きやすさを向上させる」など、制度の背景をふまえた訴求が求められます。