マイクロカレントは効果なし?「感じない電気」の作用と科学的根拠を研究から整理
ブログ監修者
行政書士/医療経営士3級
棚橋 和宏
(たなはし かずひろ)
emio株式会社 補助金・助成金情報担当
笑みを行政書士事務所 行政書士
【保有資格】
(令和8年7月15日登録)
大手リハビリ機器メーカーで7年半、医療機器コンサルタント会社で4年勤務。現在はemio株式会社にて、接骨院・整骨院・鍼灸院向けの医療機器導入、補助金・助成金情報の発信、設備投資に関する相談対応を行っています。
令和8年7月15日付で行政書士登録。笑みを行政書士事務所を開設し、補助金申請書類の作成支援、許認可に関する相談、事業者向けの書類作成支援にも対応しています。
本ブログでは、施術所業界の現場感と行政書士としての知見をもとに、補助金・助成金、設備導入、Web集客、AI活用などに関する情報をわかりやすくお届けします。
最終更新:2026年10月21日
マイクロカレント(微弱電流)は、刺激をほとんど感じない電気です。そのため「本当に効いているのか」「効果なしではないか」と疑問に思われることがあります。本記事では、接骨院・鍼灸院の院長・スタッフに向けて、細胞・動物の研究と人を対象にした研究を分けたうえで、科学的根拠として言えていること・言えていないことを、出典つきで整理します。
施術所での使いどころ、使う時間・回数、禁忌の確認は、別記事「マイクロカレント(微弱電流)とは?施術所での使いどころと、使う時間・回数の考え方」で整理しています。
マイクロカレントは効果なし?そう言われる理由

刺激を感じないから
マイクロカレントは、マイクロアンペア(1アンペアの100万分の1)という、ごく弱い電流を使います。感覚の神経が反応しにくい弱さなので、通電していても刺激をほとんど感じません。
電気刺激は「ピリピリ感じるほど効いている」と受け止められやすいため、何も感じないと「効果なし」と思われがちです。ただし、感じるかどうかと、効いているかどうかは別の問題です。どちらも、研究で確かめるしかありません。
研究の結果が一致していないから
マイクロカレントの研究には、効果を示したものもあれば、偽の刺激と差がなかったものもあります。後で紹介するように、同じ「運動後の筋肉痛」を対象にした研究でも、結果が分かれています。
研究の結果がそろっていない状態で、どちらか一方の研究だけを取り上げると、「効く」とも「効果なし」とも言えてしまいます。インターネット上で評価が割れるのは、このためでもあります。
宣伝の言い方が研究より先を行っているから
機器の宣伝やインターネットの記事では、「治りが早くなる」「回復を加速させる」といった強い表現を見かけることがあります。研究で確かめられている範囲より強い言い方をすると、読み手が実際に試して変化を感じなかったとき、「嘘だった」という受け止めにつながります。
研究で言えていることを、言えている範囲で伝えることが、施術所として信頼を保つうえでも大切です。
作用の仮説:細胞・動物の研究で言われていること

ATPとの関係を示した1982年のラットの研究
マイクロカレントの作用としてよく挙げられるのが、細胞のエネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)との関係です。その根拠としてよく引用されるのが、1982年に発表されたラットの皮膚を使った研究(Cheng ら)です。
この研究では、ラットの皮膚の組織に弱い直流電流を流し、10〜1000マイクロアンペアの範囲でATPの量とたんぱく質の合成が増えたと報告されています。ただし、これは取り出した組織での実験であり、人の身体に流したときに同じことが起きると確かめたものではありません。
筋肉の回復を調べた2015年のマウスの研究
筋肉の損傷との関係を調べた研究もあります。2015年に発表されたマウスの研究(Fujiya ら)では、薬剤で筋肉を損傷させたマウスにマイクロカレントを流し、刺激をしなかったマウスと比べています。
この研究では、筋肉の重さや筋線維の太さの回復が早かったと報告されています。ただし、比べた相手は偽の刺激ではなく「刺激なし」のマウスでした。動物の研究の結果は、人のけがへの効果を示すものではありません。 作用の仮説を考える材料として受け止めるのが適切です。
仮説と効果は分けて考える
細胞や動物の研究は、「なぜ効く可能性があるのか」という仮説を立てるために役立ちます。一方で、人に使ったときに痛みや機能が変わるかどうかは、人を対象にした研究で確かめる必要があります。
例えば「ATPが増えるから治りが早くなる」という説明は、細胞の研究の結果と、人への効果をつないでしまっています。来院者への説明では、この二つを混ぜないことが大切です。
人を対象にした研究で分かっていること

運動後の筋肉痛:結果が分かれている
運動後の筋肉痛(遅発性筋痛)を対象にした研究は、結果が分かれています。
1999年の研究(Allen ら)では、18人の腕に筋肉痛を起こし、マイクロカレントと、電流が流れない偽の機器とを比べました。その結果、痛みや関節の動く範囲に差は見られませんでした。
一方、2002年の研究(Lambert ら)では、30人の健康な男性を対象に、貼るタイプのマイクロカレントと偽のものを比べています。この研究では、筋力の低下や筋損傷の指標の上がり方が小さかったと報告されています。ただし、痛みと腫れは、どちらのグループでも強く出ていました。 また、パッチを長時間貼り続ける方式で、施術所の機器とは使い方が異なります。
筋骨格系の痛み:2021年のレビュー
肩・膝・腰などの痛みを対象にした研究をまとめたものに、2021年のシステマティックレビュー(Iijima ら)があります。システマティックレビューとは、あるテーマの研究を決まった手順で集めて、全体として何が言えるかを評価する研究です。
このレビューでは、偽の刺激と比べて、肩の痛みと膝の痛みでは改善が見られた一方、腰の痛みでは効果が見られませんでした。ただし、どの部位も根拠になった比較試験は1本ずつです。レビューの結論は「有望な選択肢だが、さらに研究が必要」というものでした。膝の研究では、改善のうち57%は偽の刺激でも起きる反応だったとも報告されています。
傷(創傷)の分野
傷の治りを対象にしたマイクロカレントの研究もあります。2020年のシステマティックレビュー(Ofstead ら)は、マイクロカレントを使った13の研究を集め、傷の治りに前向きな結果をまとめています。
ただし、このレビューに含まれた研究の多くは、金属を含む特殊なドレッシング材が自ら弱い電流を生む方式のもので、電極を貼る装置を使った研究は一部でした。傷の医療の分野の話であり、施術所でのけがの施術に当てはめられる結果ではありません。
研究から言えること・言えないこと

言えること
ここまでの研究から言えるのは、次のようなことです。
- 細胞や動物の研究では、ATPや筋肉の回復との関係を示す報告がある
- 人を対象にした研究では、偽の刺激と比べて改善が見られたものがある
- 一方で、偽の刺激と差がなかった研究もある
- 研究の範囲では、重い有害事象は報告されていない(2021年のレビュー)
言えないこと
一方で、現時点では次のようには言えません。
- 「けがの治りが早くなる」「回復を加速させる」
- 「どんな痛みにも効く」
- 「この時間・この回数で使えば効果が出る」
人を対象にした研究は数が少なく、規模も小さいものが中心です。部位や症状ごとに根拠になる研究が1本しかないことも珍しくありません。「効果なし」と断定できるほどの根拠も、「効く」と言い切れるほどの根拠も、まだそろっていないというのが、研究から見える現状です。
研究を読むときに見るところ
マイクロカレントに限らず、電気刺激の研究を読むときは、次の点を確かめると内容を誤解しにくくなります。
- 細胞・動物の研究か、人の研究か
- 偽の刺激と比べているか(「何もしない」と比べたのか)
- 何人を対象にしたか
- 施術所で使う機器と同じ使い方か
例えば、Lambert らの研究のように、貼り続けるタイプの方式で得られた結果を、施術所の据え置き型の機器にそのまま当てはめることはできません。
偽の刺激(シャム)と比べる意味

体感がないから偽の刺激と比べやすい
研究では、本当に作用があるかを確かめるために、電流を流さない「偽の刺激(シャム)」と比べる方法が使われます。マイクロカレントは刺激を感じないため、受ける人が本物か偽物かを見分けにくく、偽の刺激と比べる試験を組みやすいという特徴があります。
Allen らの研究は、電流が流れないように改造した機器を偽の刺激として使っています。こうした比較で差が出なかったという結果は、「感じない電気」の効果を考えるうえで重く受け止める必要があります。
プラセボの反応は効果とは別
偽の刺激でも、痛みが和らいだと感じることがあります。これはプラセボの反応と呼ばれ、施術への期待や安心感などが影響していると考えられています。2021年のレビューでも、膝の研究で改善の一部が偽の刺激でも起きていました。
プラセボの反応が起きること自体は、研究でもよく見られる現象です。ただし、プラセボの反応を、マイクロカレントそのものの効果として説明することはできません。 来院者への説明でも、この二つを分けておく必要があります。
「感じない電気」をどう説明するか
研究の現状を踏まえると、来院者には「刺激の弱い電気を使う施術で、研究はまだ途中の段階です」といった、事実の範囲で伝えるのが誠実な説明でしょう。
「感じないけれど効いています」と言い切ると、研究で確かめられている範囲を超えてしまいます。施術所での説明の言い方や、使う時間・禁忌の確認については、「マイクロカレント(微弱電流)とは?」で整理しています。
他の電気刺激との違いと、施術所での位置づけ

他の電気刺激とは目的が違う
低周波、干渉波、EMSなどの電気刺激は、神経や筋肉をはっきり反応させることを目的に使われます。マイクロカレントは、神経や筋肉を強く反応させることを目的としていない点で位置づけが異なります。機器ごとの違いは「干渉波・EMS・ハイボルテージ・マイクロカレントの違いとは?」で整理しています。
根拠の強さを踏まえて使い方を決める
研究の現状を踏まえると、マイクロカレントは「これさえ使えばよい」という機器ではありません。強い刺激を避けたい場面などで、ほかの施術と組み合わせる選択肢の一つとして位置づけるのが現実的です。
例えば、施術の中心は手技や運動療法に置き、刺激の強い電気が使いにくい場面でマイクロカレントを選ぶ、といった使い方です。根拠が限られていることを前提に、施術全体の中での役割を決めておくと、来院者への説明もぶれにくくなります。
新しい研究に目を向け続ける
マイクロカレントの研究は、まだ数が少なく、これから結果が積み重なっていく分野です。新しいレビューや大きな比較試験が出れば、言えることが変わる可能性があります。
施術所としては、機器の宣伝文句ではなく、研究の出典に当たる習慣をつけておくことが大切です。PubMed などの論文データベースでは、研究の要旨を誰でも確認できます。
まとめ
マイクロカレントが「効果なし」と言われる背景には、刺激を感じないこと、研究の結果が一致していないこと、宣伝の言い方が研究より強いことがあります。細胞や動物の研究では、ATPや筋肉の回復との関係を示す報告がありますが、それは人への効果を示すものではありません。
人を対象にした研究では、偽の刺激と比べて改善が見られたものと、差がなかったものの両方があります。2021年のレビューは、筋骨格系の痛みに対して有望としつつも、さらに研究が必要だとまとめています。現時点では、「効果なし」と断定できるほどの根拠も、「けがの治りが早くなる」と言い切れるほどの根拠もそろっていません。
施術所としては、研究で言えていることを言えている範囲で伝え、プラセボの反応と効果を混ぜずに説明することが大切です。マイクロカレントは、根拠が限られていることを前提に、施術全体の中での役割を決めて使う選択肢の一つと考えるとよいでしょう。
物療の基本的な内容については、別記事でも紹介しています。合わせてご覧ください。物理療法の基礎知識の記事一覧
参考文献
- Cheng N, et al. The effects of electric currents on ATP generation, protein synthesis, and membrane transport of rat skin. Clin Orthop Relat Res. 1982;(171):264-272. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7140077/
- Fujiya H, et al. Microcurrent electrical neuromuscular stimulation facilitates regeneration of injured skeletal muscle in mice. J Sports Sci Med. 2015;14(2):297-303. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25983578/
- Allen JD, et al. Effect of microcurrent stimulation on delayed-onset muscle soreness: a double-blind comparison. J Athl Train. 1999;34(4):334-337. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16558582/
- Lambert MI, et al. Electro-membrane microcurrent therapy reduces signs and symptoms of muscle damage. Med Sci Sports Exerc. 2002;34(4):602-607. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11932567/
- Iijima H, Takahashi M. Microcurrent Therapy as a Therapeutic Modality for Musculoskeletal Pain: A Systematic Review Accelerating the Translation From Clinical Trials to Patient Care. Arch Rehabil Res Clin Transl. 2021;3(3):100145. https://doi.org/10.1016/j.arrct.2021.100145
- Ofstead CL, et al. The impact of continuous electrical microcurrent on acute and hard-to-heal wounds: a systematic review. J Wound Care. 2020;29(Sup7):S6-S15. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32654615/
公式LINEに登録すると届くもの
- 院の地域で使える、新着の補助金・助成金情報
- 締め切りが近い制度のお知らせ
- LINEのメニューから、行政書士 棚橋への無料相談を申し込めます
登録のときに、院の所在地(市区町村まで)と院名をお聞きします。配信はブロックでいつでも停止できます。プライバシーポリシー
スマホで読み取る



