干渉波の“治療周波数”と“搬送周波数”の違いとは?仕組みと役割をわかりやすく解説
ブログ監修者
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棚橋 和宏
(たなはし かずひろ)
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Contents
干渉波治療における“治療周波数”とは?

治療周波数の基本概念
干渉波治療でいう「治療周波数」とは、患者さんが実際に「トントン」「ズーン」と感じている刺激の速さを指します。干渉波は、その名の通り二つの電気が体の中で重なり合い、強くなったり弱くなったりをくり返すことで独特のリズムを生み出します。この強弱のくり返しの速さが、治療周波数です。接骨院や鍼灸院でよく使われる「○ヘルツで鎮痛をねらう」「少しゆっくりめの周波数で筋ポンプを出したい」といった設定は、すべてこの治療周波数をどの値にするかを決めていることになります。つまり、治療周波数は「どのような治療効果をねらうのか」を決める中心的な要素だと言えます。
ビート周波数が生まれる仕組み
干渉波治療器は、二つの中周波電流をわざと少しだけ違う速さで体内に流します。たとえば一方は4,000ヘルツ、もう一方は4,100ヘルツというように、わずかに差をつけて送ります。この二つの電気が筋肉や組織の中で重なり合うと、強く感じる瞬間と弱く感じる瞬間が交互に現れます。強くなるリズムの回数が、1秒あたり何回かという「ビート」の数が、そのまま治療周波数になります。先ほどの例であれば、4,100から4,000を引いた100が治療周波数です。患者さんが意識するのは4,000や4,100といった速い振動ではなく、この「差」から生まれる100ヘルツのリズムになります。この仕組みを理解しておくと、なぜ数値を少し変えただけで刺激の感じ方や治療の印象が大きく変わるのか、スタッフ同士でも共有しやすくなります。
治療周波数がもたらす主な効果
治療周波数は、どの受容器がどのように反応するかに関わってきます。ゆっくりとした刺激であれば「ズーン」と重だるい感覚が出やすくなり、速い刺激であれば「チリチリ」「ビリビリ」とした感覚になりやすい傾向があります。同じ干渉波治療器を使っていても、治療周波数の設定を変えるだけで患者さんの感じ方ががらりと変わるのはそのためです。ここでは、現場でよく使われる代表的な効果を三つに分けて整理しておきます。
鎮痛効果
痛みの軽減をねらう場合は、比較的ゆっくりめ、あるいは中程度の速さの治療周波数が使われることが多くなります。ゆっくりとしたリズムの刺激は、体の中で「痛みを抑える仕組み」を働かせやすいと言われており、「ズーン」とした心地よい重さや、じんわり広がる感覚が出やすくなります。患者さんの多くは、この重だるいような感覚が出てきた頃に「効いてきた気がする」と感じることが多く、治療への納得感にもつながります。急性の痛みであれば刺激を強くしすぎないようにしつつ、じわっとした鎮痛感を引き出せる設定がポイントになります。
筋ポンプ作用と血流改善
関節の周囲がむくんでいる場合や、筋肉の張り感が強い場合には、筋肉をリズミカルに動かしてあげることが重要になります。このときに役立つのが、少し速めの治療周波数です。電気刺激によって筋肉が「ギュッ、ギュッ」と収縮と弛緩をくり返すことで、ポンプのように血液やリンパの流れを助ける働きが期待できます。これがいわゆる筋ポンプ作用です。治療周波数を適切に選ぶことで、実際に動かさなくても軽い体操をしているかのような効果をねらうことができ、可動域の改善や冷えの軽減にもつなげやすくなります。
筋緊張の緩和
長時間のデスクワークや同じ姿勢の仕事が続くと、筋肉は硬くこわばりやすくなります。このような筋緊張を和らげたい場合には、あまり速すぎない、しかしある程度リズムを感じられる治療周波数が選ばれることが少なくありません。ややゆっくりめの一定リズムの刺激は、筋肉に「力を抜いても大丈夫だ」という信号を送りやすく、無意識に入っていた力みがほぐれやすくなります。患者さんからは「肩が軽くなった」「首が回しやすくなった」といった声が出やすい場面であり、ストレッチや手技と組み合わせることで、より高いリラックス効果も期待できます。
干渉波治療における“搬送周波数”とは?

搬送周波数の役割と意義
搬送周波数とは、干渉波治療器が体に電気を届けるときの「土台」となる周波数です。治療周波数が患者さんが感じる刺激そのものだとすれば、搬送周波数はその刺激を体の深い場所まで運ぶための“通り道”のような役割を果たします。干渉波が低周波とは違って、比較的強い電気でも痛みを感じにくいのは、この搬送周波数が中周波帯にあるためです。中周波は皮膚の抵抗にさえぎられにくく、筋肉や関節の奥へ電気を届ける力に優れています。そのため、干渉波治療において搬送周波数は欠かせない要素となっています。
中周波が深部まで電流を届ける理由
搬送周波数が中周波で設定されるのは、皮膚の抵抗をなるべく小さくするためです。低周波のようにゆっくりした波は、皮膚の表面で反応しやすく、チクチク感や不快感が出やすくなります。一方、中周波は波の速さが高いため、皮膚を通り抜けやすく、深部へ電気を効率よく運ぶことができます。皮膚に余計な刺激が出にくいということは、その分、治療周波数が深い場所で均一に働きやすくなるということにもつながります。患者さんが「気持ちよく入ってくる」と感じたり、「奥まで響くようだ」と言うことがあるのは、この特徴が関係しています。
ここで、周波数と皮膚抵抗の一般的な関係を簡単に整理しておきます。
| 周波数帯 | 皮膚刺激 | 深部への通りやすさ |
| 低周波 | やや強い | やや弱い |
| 中周波(搬送周波数) | 少ない | 高い |
この違いのおかげで、干渉波治療は低周波では届きにくい深い組織へのアプローチが可能になります。
搬送周波数が刺激の感じ方に与える影響
搬送周波数が変わると、患者さんが感じる刺激の印象も変わってきます。中周波は痛みを出しにくいという特徴がありますが、その中でも数値が高いほど皮膚の抵抗がさらに小さくなり、刺激がよりなめらかに感じられます。たとえば5,000ヘルツの搬送周波数と10,000ヘルツを比べると、10,000ヘルツの方が刺激が柔らかく、「スッと入る」ように感じることがあります。逆に、搬送周波数が低めの場合は、刺激の存在感がやや強くなる場合もあります。
このように、搬送周波数は治療周波数そのものを変えるわけではありませんが、治療刺激がどのように届くか、どれくらい心地よく感じられるかに影響を与える重要な要素になっています。患者さんによって「強く感じたい」「やさしい刺激が良い」といった好みが異なるため、搬送周波数を理解しておくと、より満足度の高い施術につながります。
治療周波数と搬送周波数の違いをわかりやすく比較

機能の違い(治療効果 vs 電流の通りやすさ)
治療周波数と搬送周波数は、どちらも干渉波治療に必要な要素ですが、果たしている役割は大きく異なります。治療周波数は体の中で実際に働く刺激そのもので、鎮痛や筋緊張の緩和といった治療目的を決める中心的な要素です。一方で搬送周波数は、その治療刺激をどれだけ深い場所まで効率よく届けられるかを左右する、いわば“運び手”のような存在です。治療周波数が効果そのものだとすると、搬送周波数はその効果をしっかり奥まで送り届けるための仕組みだと理解すると、両者の違いがつかみやすくなります。
ここで二つの周波数の関係を整理すると、治療周波数は患者さんの体感として直接あらわれるのに対し、搬送周波数はその刺激をどれだけスムーズに通すかに関連します。つまり、治療の質を左右するのは治療周波数であり、その効果を支える縁の下の力持ちが搬送周波数という位置づけになります。
刺激感の違い(響きの質)
治療周波数は、刺激そのものの性質を決めます。ゆっくりした治療周波数では重だるい感覚が出やすく、速い治療周波数では細かい振動のような印象が強くなります。一方で搬送周波数は、この刺激がどれだけ滑らかに感じられるかに影響します。搬送周波数が高いほど皮膚の抵抗が小さくなるため、刺激がやわらかく入り、「不快感が少ない」と感じることが多くなります。搬送周波数が低めだと刺激がはっきりしやすく、深い場所に響くような強めの感覚が出ることがあります。
この違いは、治療目的だけでなく、患者さんがどのような刺激を心地よいと感じるかにも関わってきます。「痛みは苦手なのでやさしい刺激が良い」という方には高めの搬送周波数が向き、「しっかり響く方が効果を実感しやすい」という方には低めの搬送周波数が合う場合があります。響き方の違いを把握しておけば、より個別性の高い施術が可能になります。
治療設定における使い分けポイント
治療周波数と搬送周波数は混同されることがありますが、使い分けのポイントを理解しておくことで施術の質は大きく変わります。治療周波数は「どんな効果をねらうか」に合わせて選ぶもので、鎮痛、筋緊張の緩和、血流改善など、狙いたい目的に応じて設定します。一方で搬送周波数は、刺激をどれだけ心地よく、どれだけ深く届けたいかという観点で調整するものになります。
深部の筋緊張をやわらげたいときには、治療周波数で目的を決め、搬送周波数で刺激の入り方を調整します。急性期であれば刺激を強くしすぎないよう搬送周波数を高めにするなど、状況に応じて柔軟に組み合わせることが重要です。この二つを意識して設定できるようになると、治療の再現性が高まり、患者さんに合わせた細やかな施術が行えるようになります。
なぜ干渉波には2種類の周波数が必要なのか?仕組みと役割

干渉波治療の基本構造
干渉波治療が成り立つためには、二つの周波数が欠かせません。まず搬送周波数という中周波の電気が体の奥まで届き、そこで別の搬送周波数と重なり合うことでリズムのある刺激が生まれます。この重なりによって、患者さんが「ズーン」「トントン」と感じる治療周波数が形成されます。つまり干渉波は、一つの周波数だけでは成立せず、二つの電気が体内で交わることで初めて特徴的な刺激と治療効果が得られる構造になっています。干渉波が低周波とは違う独特の心地よさを作り出せるのは、この二層構造が背景にあります。
治療周波数は効果そのものを生み出す役割を持ち、搬送周波数はその治療刺激を奥まで運ぶための通り道を担います。この二つが組み合わさることで、深部の筋肉や関節に向けた治療が可能になり、患者さんが感じる刺激もより滑らかで快適なものになります。
治療周波数と搬送周波数が生み出す相乗効果
治療周波数と搬送周波数は、それぞれ単独では十分な効果を発揮しません。中周波だけを流しても治療のリズムは生まれず、患者さんが刺激を感じにくいため治療効果を出しにくくなります。一方で治療周波数だけを設定しようとしても、皮膚の抵抗に邪魔されて深い場所に届かないため、狙った効果を引き出すことができません。両者がそろって初めて、干渉波本来の治療効果が発揮されるのです。
搬送周波数が深部へ電気を届け、治療周波数がその深部で働く。それぞれの役割が明確に分かれているからこそ、干渉波は深い筋層や関節周りの治療に適しており、低周波では届きにくい部分にまでしっかりアプローチできます。これが、干渉波治療器が長年にわたり現場で選ばれてきた理由の一つでもあります。
現場で起こりやすい誤解と正しい理解
治療周波数と搬送周波数は名前が似ているため、混乱しやすいという特徴があります。とくに「どちらが治療効果を決めるのか」という点について誤解されやすく、搬送周波数を変えれば治療の作用そのものが変わると考えられることがあります。しかし実際には、治療の方向性を決めるのはあくまで治療周波数であり、搬送周波数はその電気をどれだけ心地よく、どれだけ深く届けられるかを決めるものです。
また「搬送周波数が高い方が深部に効く」という言い方をされることがありますが、これは刺激の“感じ方”の話であって、電気が届く深さとは必ずしも一致しません。深達性そのものは高めの搬送周波数が有利ですが、強く響く感覚を出すには低めの搬送周波数の方が向いていることがあります。このように、治療効果・刺激感・深達性をそれぞれ分けて理解しておくと、現場での設定に迷わなくなります。
臨床現場で活かせる周波数設定の考え方とポイント

症状別の周波数選択の目安
干渉波治療をより効果的に使いこなすためには、治療周波数と搬送周波数を「どの症状にどう組み合わせるか」を押さえておくことが重要です。たとえば、急性期の鋭い痛みであれば、刺激を強く感じさせないように搬送周波数を高めに設定しつつ、治療周波数をやや低めにして落ち着いた刺激を届ける方法があります。逆に慢性的なコリや張りが強い場合は、治療周波数を中程度からやや速めに設定して筋肉のポンプ作用を引き出し、搬送周波数を少し下げることで深部に響く感覚を得やすくできます。このように症状によって組み合わせを変えることで、より個別性の高い施術が可能になります。
干渉波の設定は一つの正解があるわけではなく、「患者さんがどう感じるか」「どこをねらいたいか」によって調整が必要になります。症状別の傾向を押さえておけば、初回から施術の方向性を定めやすくなり、より納得感のある治療が提供できます。
急性期の疼痛緩和
急性期では組織が敏感になっているため、強い刺激を避けることが大切です。搬送周波数を高めにすることで皮膚刺激を減らし、治療周波数をゆっくりめにすることで落ち着いたリズムの刺激が得られます。この組み合わせにより、痛みへ過度な負担をかけず、じんわりとした鎮痛効果を引き出しやすくなります。
慢性痛へのアプローチ
慢性の腰痛や肩こりなど、長く続く症状には、一定のリズムで筋肉を動かしていく刺激が向いています。治療周波数を中程度に設定し、筋ポンプ作用を引き出すことで、張り感の軽減と血流改善が期待できます。搬送周波数については、刺激の入り方を調整するためにやや低めにする場合もあり、筋肉の奥に響く感覚をねらいたいときに適しています。
深部組織へのアプローチ
殿部の筋肉や深い場所にある硬結をねらいたい場合には、搬送周波数の特性を活かすことが重要になります。皮膚抵抗の影響を受けにくい高めの搬送周波数を選ぶことで、奥まで電気が届きやすくなります。その上で、深く響く治療感を出したい場合には治療周波数をやや低めにし、重だるい刺激を作ることで深部組織へのアプローチがしやすくなります。
患者への説明に役立つポイント
干渉波の設定は細かく感じられるかもしれませんが、患者さんへ説明するときは難しい専門用語を避け、なぜその設定にするのかをシンプルに伝えることが大切です。「治療周波数は刺激のリズムで、症状に合わせて選びます」「搬送周波数は奥まで電気を届けるためのものです」といった説明にすると、患者さんは理解しやすくなります。丁寧な説明は安心につながり、治療への信頼感や納得感も高まります。
また、刺激の感じ方は人によって大きく異なることがあるため、「もし強かったら教えてください」「響き方を調整できます」という声かけを添えると、コミュニケーションがスムーズになり、施術の満足度も高まりやすくなります。
適切な設定で治療効果を最大化する方法
干渉波は、ただ電気を流せばよいというものではありません。治療周波数と搬送周波数の関係を理解し、症状に合わせて適切な組み合わせを選ぶことで、治療効果は大きく変わります。たとえば深部の硬い筋肉をねらうときには、搬送周波数の特性を優先し、刺激を奥へ届ける設定にする必要があります。一方で、筋肉の張りを軽減したい場合には治療周波数のリズムが重要になり、筋ポンプ作用を促す方向で設定を調整します。
このように、二つの周波数を別々の役割として理解しておくことで、治療の精度が上がり、患者さん一人ひとりに合わせた柔軟な施術が可能になります。設定に迷ったときは、まず症状と目的を整理し、刺激のリズムと刺激の入り方を別々に考えると判断しやすくなります。
まとめ:両者の違いを理解すると治療の質が上がる

治療周波数と搬送周波数は、どちらも干渉波治療に欠かせない存在ですが、それぞれの役割はまったく異なります。治療周波数は刺激のリズムそのもので、鎮痛、筋緊張の緩和、血流改善といった効果の方向性を決める中心的な要素です。一方で搬送周波数は、その治療刺激をどれだけ深い部分に届けられるかを左右し、刺激の滑らかさや心地よさに影響します。この二つがそろってはじめて、干渉波の特徴である“深部への快適な刺激”が実現します。
現場で治療設定に迷うことがあるのは、どちらの周波数が何を決めているのかが曖昧になってしまうからです。それぞれを別の役割として理解しておけば、症状ごとの使い分けがはっきりし、治療の組み立てがしやすくなります。深部の硬さをねらうのか、急性の痛みを落ち着かせたいのか、あるいは筋肉の張りを改善したいのか。目的に応じて治療周波数で方向性を決め、搬送周波数で刺激の入り方を整えることで、施術全体の質が安定し、患者さんにとっても納得度の高い治療につながります。
干渉波治療をさらに活かすためには、今回整理した二つの周波数の違いを押さえ、設定を意識して使い分けることが重要になります。周波数の選択を丁寧に行うだけで、同じ機器でも治療の印象が変わり、狙った効果が引き出しやすくなります。こうした理解が深まるほど、治療の幅は広がり、患者さんそれぞれに合わせた最適なアプローチが可能になります。


