調子が悪い・壊れてからでは遅い|計画から始める補助金・助成金の活用法
ブログ監修者
プランナー
棚橋 和宏
(たなはし かずひろ)
【保有資格:医療経営士3級】
整骨院の開業・運営にかかる費用を少しでも抑えたい、補助金を活用したいとお考えの方へ。
私は医療機器販売と補助金申請支援の経験を活かし、整骨院経営を資金面からサポートしています。
「自院が対象になるのか分からない」「申請手続きが不安」そんなお悩みに丁寧に寄り添い、最適な制度選びから申請サポートまで対応。
補助金を活用することで設備投資や差別化が可能となり、経営の安定化にもつながります。
まずはお気軽にご相談ください。先生の想いを形にするお手伝いをさせていただきます。
Contents
なぜ「調子が悪い・壊れてから」では補助金・助成金は遅いのか

補助金・助成金は緊急対応の制度ではない
「受付が回らない」「機器が不調で施術が滞る」「スタッフが辞めそうで賃上げを急ぎたい」。院経営では、こうした“今すぐ何とかしたい”場面が必ず出てきます。ところが、補助金・助成金は、その火消しに使える制度だと思って動くと、うまくいかないことが多いのが実情です。
なぜなら、多くの補助金・助成金は「困ったから助ける」ためではなく、「これから良くする」ために用意されているからです。つまり、いま起きている問題をその場で埋めるよりも、同じ問題が繰り返されないように、少し先の改善に投資する考え方が前提になっています。
院でよくある例に置き換えると分かりやすいでしょう。設備が古くなり、使えるけれど不安がある状態が続くと、いつか必ず「止まる日」が来ます。止まってから動くと、選べる機種も業者も限られ、費用も上がりやすくなります。さらに施術枠が減り、売上にも影響が出ます。こうなると、補助金・助成金を探す余裕すらなくなることがあります。
だからこそ、補助金・助成金の活用は「調子が悪くなったから」ではなく、「調子が悪くなる前に」考える方が合っています。ここで大切なのは、“危機感”をあおることではありません。経営者として自然な判断を、制度に合う形に整えることです。
もう一つ、よくある誤解が「お金が出るなら、とりあえず申請すればいい」という発想です。ところが、制度側が求めているのは、単なる購入や一時的な支払いではなく、「どう改善し、どう続けるか」というストーリーです。たとえば設備を入れ替えるなら、どの業務がどれだけ楽になり、院の運営がどう変わるのか。賃上げをするなら、なぜ今それが必要で、どうやって続けるのか。こうした“筋道”が最初から組み込まれていないと、制度に合いにくくなります。
「壊れてから」でも何とかしたい気持ちは当然あります。ただ、補助金・助成金は、そういう局面で万能に使える道具ではありません。だからこそ、先に計画を持ち、余裕のあるうちに使い方を決めておく必要があります。
事前着手が認められない仕組み
補助金・助成金が「後追い」に向かない理由として、特に大きいのが“順番”です。制度によって細かな違いはありますが、基本的には「申請して、認められてから、実行する」という流れが求められます。
ここでつまずきやすいのが、現場のスピード感とのズレです。院では、壊れそうな機器を放置できません。スタッフの採用や定着にも待ったがきかない場面があります。だからこそ、先に動いてしまいがちです。しかし、先に動いたことが原因で、補助の対象から外れてしまうことがあります。
制度は、あとから領収書を出して「これを補助してください」と言えるように作られていない場合が多いです。だから、結果的に「やるべきことをやったのに、制度を使えなかった」という残念な状況が起こります。
このズレを埋めるのが「計画」です。先に計画を立て、申請に必要な段取りを押さえておけば、いざという時に慌てずに済みます。設備が限界に近いと分かっているなら、壊れる前に申請の準備をしておく。賃上げが避けられないなら、いつ・誰を・どれくらい上げるかを早めに固めておく。これだけで、制度の選択肢が大きく広がります。
設備購入・賃上げを先に行うリスク
「とにかく買い替えないと回らない」「このままでは辞められる」。こうした状況で先に動く判断は、現場としては正しいこともあります。ただし、補助金・助成金の観点ではリスクになります。
設備購入を先に進めてしまうと、制度上は「もう終わった投資」と見なされることがあります。賃上げを先に実施すると、「制度を使って賃上げしたい」という説明が難しくなる場合があります。すると、せっかく制度を探しても、入口の段階で止まってしまいがちです。
ここで誤解しないでいただきたいのは、「先に動くのが悪い」という話ではありません。問題は、先に動くしかない状態に追い込まれていることです。つまり、日常の中で“近いうちに起きる困りごと”を見える化し、先回りして準備する体制があるかどうかが分かれ道になります。
補助金・助成金は、壊れてからの応急処置よりも、壊れる前の予防に向いています。計画を立てることは、制度のためだけではなく、院の判断を早め、選べる余地を増やすための武器になります。
補助金・助成金活用の一丁目一番地は「計画」にある

制度探しから始めてはいけない理由
補助金・助成金の相談で多いのが、「何か使える制度はありませんか?」という入り方です。気持ちはよく分かりますが、この順番で考え始めると、ほとんどの場合うまくいきません。理由はシンプルで、制度は数が多く、条件もばらばらだからです。
制度名だけを見て「これが使えそうだ」と判断しても、実際には賃上げの条件が合わなかったり、対象となる設備が限定されていたりします。結果として、途中で断念したり、無理に内容を合わせようとして不自然な計画になったりします。
本来、補助金・助成金は「やりたいことが先にあり、それを後押しするために使うもの」です。設備を更新したいのか、業務を効率化したいのか、スタッフの待遇を改善したいのか。その方向性が決まっていなければ、制度を選ぶ基準も定まりません。
院経営に置き換えると、受付業務が限界なのか、施術の回転に課題があるのか、人の定着が問題なのかによって、取るべき手段は変わります。にもかかわらず制度探しから入ってしまうと、「制度に合わせて院を動かす」形になり、現場とのズレが生じやすくなります。
だからこそ、最初にやるべきことは制度を調べることではありません。院として、これから何を改善したいのか、そのためにどんな投資が必要なのかを整理することです。その延長線上に、使える制度が見えてきます。
審査で重視される「計画の一貫性」
補助金・助成金の審査では、細かな書き方以上に「全体がつながっているか」が見られています。なぜこの設備が必要なのか、なぜこのタイミングで賃上げを行うのか、その結果、院の運営がどう変わるのか。これらが一本の流れとして説明できるかどうかが重要です。
たとえば、業務を効率化するために設備を導入し、その分スタッフの負担が減り、結果として賃上げが可能になる。こうした流れが自然に描けていれば、内容はシンプルでも評価されやすくなります。逆に、設備と賃上げが切り離されていると、「なぜこの組み合わせなのか」が伝わりません。
ここで言う計画とは、立派な資料を作ることではありません。現状の課題、やりたい改善、そこに必要な費用と時期を、順序立てて整理することです。この整理ができていれば、申請書を書く段階で迷うことが少なくなります。
補助金・助成金の世界では、「計画が八割」と言われることがあります。書類作成の前に、この一貫性をどれだけ詰められているかが、結果を大きく左右します。
計画なき補助金・助成金申請が失敗する理由

「使えそう」という判断の落とし穴
補助金・助成金がうまく活用できない院に共通するのが、「使えそうだから申請する」という考え方です。知人の院が使っていた、業者に勧められた、ネットで見かけた。こうしたきっかけ自体は悪くありませんが、それだけで判断してしまうと、後から無理が生じます。
制度は、それぞれ前提としている院の状況が異なります。人を増やしたい院向けのものもあれば、業務の効率化を重視するものもあります。ところが計画がないまま制度を選ぶと、「条件を満たすためだけの動き」が増えてしまいます。結果として、現場に合わない設備を入れたり、本来の意図とは違う形で賃上げを行ったりすることになります。
また、「とりあえず申請してみよう」という姿勢は、準備不足につながりやすいです。制度の趣旨を十分に理解しないまま書類を作成すると、伝えたい内容がぼやけてしまいます。審査側から見ると、なぜこの院がこの制度を使う必要があるのかが見えず、不利になりがちです。
本来であれば、「この課題を解決するために、この取り組みを行う。その結果として、この制度を使う」という順番が自然です。ここが逆になると、申請は形だけ整っても、評価されにくくなります。
数字と根拠が不足した計画の問題点
もう一つの大きな失敗要因が、数字と根拠が弱い計画です。補助金・助成金は気持ちや意気込みを評価する制度ではありません。実際に実行できるか、続けられるかを見られています。
たとえば賃上げを行う場合でも、「頑張るから上げる」では通りません。どれくらい人件費が増え、その負担をどう吸収するのかを説明する必要があります。設備投資についても同様で、入れ替えることで何が変わり、どんな効果が見込めるのかを示さなければなりません。
ここで求められる数字は、難しい計算ではありません。現在の人件費、設備の使用状況、業務にかかっている時間など、院の中にすでにある情報を整理するだけで十分です。それでも数字を出せない計画は、「実行後の姿」が想像しにくく、説得力を欠いてしまいます。
計画が弱いと、申請そのものが通らないだけでなく、仮に採択されたとしても、運用段階で苦しくなることがあります。制度を使うことが目的になってしまい、経営改善につながらないのです。だからこそ、申請前の段階で、数字と根拠を含めた計画をしっかり整えておくことが重要になります。
院経営に必要な補助金・助成金活用計画の立て方

現状把握から始める計画作り
補助金・助成金の計画というと、「難しそう」「特別な資料が必要そう」と感じる方も多いかもしれません。しかし、実際に最初にやることは、とてもシンプルです。それは、いま院がどんな状態にあるのかを正直に整理することです。
日々の業務に追われていると、「何となく忙しい」「何となく回っていない」といった感覚だけが積み重なりがちです。計画を立てる場面では、その感覚を一度言葉にし、順番に並べていきます。どこで時間が取られているのか、どこに負担が集中しているのかを見える形にするだけで、改善の方向性が浮かび上がります。
ここで重要なのは、最初から立派な計画を作ろうとしないことです。むしろ、「不便に感じていること」「このままではまずいと思っていること」を書き出す方が役に立ちます。その中から、設備で解決できること、仕組みを変えることで軽くなることが見えてきます。
計画は、申請書のためだけに作るものではありません。院の中で共通認識を持つための整理でもあります。この段階を丁寧に行うほど、後の判断が楽になります。
人件費・設備・業務負担の整理
現状把握の中でも、特に押さえておきたいのが人件費、設備、業務負担の三つです。
人件費については、「高いか安いか」ではなく、「これからどうなるか」を見ることが大切です。最低賃金の上昇や採用環境を考えると、今後も負担は増えていきます。その増加を前提に、どこまで対応できるのかを考えます。
設備については、「使えるかどうか」だけで判断しないことがポイントです。動いてはいるものの、時間がかかる、トラブルが多い、使える人が限られる。こうした状態は、目に見えにくい負担を生んでいます。
業務負担は、スタッフの動きや一日の流れを思い浮かべると整理しやすくなります。受付、施術準備、片付け、事務作業。どこに無理がかかっているのかが分かれば、投資の優先順位も自然と決まります。
中長期視点で考える投資と賃上げ
現状を整理したら、次に考えるのが少し先の話です。補助金・助成金は、今年だけを乗り切るための制度ではありません。数年先まで見据えた動きと相性が良い仕組みです。
たとえば、設備を入れ替えることで業務が楽になり、残業が減る。その結果、賃上げを行っても無理が出にくくなる。こうした流れを描くことで、計画に現実味が生まれます。
賃上げについても、「いつか上げたい」という話では足りません。いつ、誰を、どのくらい上げるのか。その後も続けられるのか。ここまで考えて初めて、補助金・助成金の計画として形になります。
中長期視点で考えることは、先延ばしにすることではありません。むしろ、先に決めておくことで、急な判断を減らすことにつながります。計画がある院ほど、制度を落ち着いて選び、無理なく活用できるようになります。
計画から始めることで補助金・助成金は経営の武器になる

先手で動く院が得られるメリット
補助金・助成金をうまく活用している院に共通しているのは、「困ってから探す」のではなく、「使う前提で準備している」という点です。あらかじめ計画を持っているため、制度の公募が始まったときに慌てることがありません。条件を確認し、自院に合うかどうかを冷静に判断できます。
先手で動く院は、設備や仕組みの選択肢も広がります。壊れてからの買い替えではなく、「この時期に更新する」と決めているため、比較検討の時間を取れます。その結果、業務が楽になり、スタッフの負担も軽くなります。こうした変化が積み重なることで、賃上げや人材定着にもつながっていきます。
また、計画があることで、制度を使わない判断もしやすくなります。条件が合わない、無理が出そうだと分かれば、見送るという選択もできます。これは、計画がない状態では難しい判断です。補助金・助成金に振り回されず、経営の主導権を握れること自体が、大きなメリットだと言えます。
今すぐ着手すべき最初の一歩
計画と聞くと、構えてしまうかもしれませんが、最初の一歩はとても小さくて構いません。いま不安に感じていること、近いうちに起きそうな問題を紙に書き出すだけでも十分です。設備の更新時期、人件費の増加、業務の限界。こうした点を整理することが、計画の土台になります。
次に、その問題を解決するために「いつ頃、何をしたいか」を考えます。ここまで整理できれば、補助金・助成金を使うかどうかの判断がしやすくなります。制度は、その後に確認すれば問題ありません。
補助金・助成金は、特別な院だけのものではありません。ただし、行き当たりばったりでは活かせない制度です。計画から始めることで、初めて経営の味方になります。調子が悪くなってから慌てるのではなく、余裕のあるうちに準備する。その姿勢が、院経営を安定させ、次の一手を選べる状態を作ります。
受付けや短時間など、地域別最低賃金に近い時給スタッフがいらっしゃる施術所は、業務改善助成金が最も相性の良い助成金の一つと言えます。
別記事でも解説しておりますので、合わせてご覧下さい。
https://emio.jp/gyoumukaizenn-jyoseikinn/中長期の視点で業務改善助成金を活用する効果と/


