補助金・助成金の原資は税金?雇用保険?制度が継続するかを判断するための4つの基準

ブログ監修者

プランナー

棚橋和宏
(たなはしかずひろ)

【保有資格】

医療経営士3級

整骨院の開業・運営にかかる費用を少しでも抑えたい、補助金を活用したいとお考えの方へ。
私は医療機器販売と補助金申請支援の経験を活かし、整骨院経営を資金面からサポートしています。
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補助金・助成金の原資はどこから?知っておきたい仕組みと財源の種類

原資とは何か?補助金と助成金の財源の基本

補助金や助成金は、事業の立ち上げや設備投資、人材育成などを支援するために、国や自治体から支給される「返済不要の資金」です。多くの中小企業や個人事業主にとって、これらの制度は貴重な資金調達手段となっていますが、そのお金がどこから来ているのかを意識したことはあるでしょうか?

補助金・助成金の原資、つまり元になるお金は、主に「税金」と「雇用保険料」です。制度の種類によって財源が異なり、それぞれの目的に応じて使い分けられています。たとえば、新技術開発や設備投資を後押しする補助金の多くは税金が財源となっており、一方、従業員の雇用維持や賃金引上げを目的とする助成金は、事業主が支払う雇用保険料が使われています。 原資の違いを理解することで、「なぜこの制度はあるのか」「自社が対象になるのはどれか」といった視点が明確になり、制度の選び方や申請時の方針もより戦略的になります。

税金が原資の補助金とは?

国税・地方税が使われるケース

補助金の多くは、私たちが日々支払っている所得税や法人税、消費税などの「国税」、そして住民税や事業税などの「地方税」を財源としています。これらの税収は、国や自治体の政策目的を実現するために使われており、補助金もその一環として機能しています。

たとえば、「ものづくり補助金」や「IT導入補助金」といった経済産業省系の補助金は、企業の生産性向上やデジタル化を支援するため、国の予算から配分されています。これにより、地域経済の活性化や雇用の創出など、広い意味での社会的利益が期待されています。

一方、地方自治体が独自に実施する補助金制度もあります。地域の特色ある産業や人口減少対策など、地元の課題に対応することを目的としており、その原資には地方税が充てられます。こうした補助金は、地域に根ざした事業者にとって、より身近で活用しやすい制度です。

雇用保険が原資の助成金とは?

雇用保険料がどのように使われているか

助成金の代表的な原資は「雇用保険料」です。これは事業主と従業員が毎月支払っている保険料で、雇用の安定や職業能力の向上を支える制度に充てられます。とくに、事業主側が支払う分は、企業が従業員の雇用を守るための支援制度として、助成金というかたちで再分配されます。

たとえば、「キャリアアップ助成金」や「両立支援等助成金」などは、正社員化や育児・介護といったライフイベントと仕事の両立を支援するもので、厚生労働省が雇用保険の財源を活用して提供しています。

このように、助成金は「雇用保険に加入している事業者が受けられる支援」という仕組みであり、従業員の雇用環境を良くしようとする取り組みに対して優先的に交付されます。制度を理解し活用することは、企業にとって大きな経営的メリットになります。

種類別に見る補助金と助成金の原資の違いとは?

経済産業省系の補助金の特徴

経済産業省が所管する補助金は、国の経済成長や地域活性化を目的に設計されています。たとえば「ものづくり補助金」や「IT導入補助金」などは、生産性の向上やデジタル化の推進を支援する代表的な制度です。

これらの補助金は、主に国の一般会計予算、つまり私たちが納めた税金(国税)を原資としています。補助の対象は法人・個人事業主を問わず広く、特に中小企業の設備投資、新規事業への挑戦、業務効率化などを後押しする内容が多いのが特徴です。

また、補助金は事業内容の将来性や社会的な意義など、提出する「事業計画書」の完成度が審査に影響します。したがって、政策との整合性や地域貢献性も見られるため、書類作成の工夫が重要となります。

厚生労働省系の助成金の特徴

一方、厚生労働省が管轄する助成金は、雇用環境の整備や労働者の待遇改善を支援する目的で提供されています。具体的には「キャリアアップ助成金」「トライアル雇用助成金」などがあり、従業員のスキルアップや正社員転換、働き方改革などに取り組む企業が対象となります。

これらの助成金の原資は、雇用保険料です。事業主が支払っている雇用保険分が財源として使われており、「雇用保険に加入していること」が制度利用の前提となります。よって、未加入の事業者は助成金の対象外となる場合があるため、まず保険制度への適正な加入が必要です。 また、補助金と違って「要件を満たせば原則受け取れる」という仕組みが多く、採択率が高い点も特徴です。ただし、実績報告や帳簿管理の正確性が求められるため、事後の対応が不十分だと返還が発生するリスクもあります。

どちらが自社に合っているかを判断するポイント

補助金と助成金は似ているようで、原資も目的も大きく異なります。補助金は政策的な投資支援が中心で、競争的な審査があるため、「事業の成長フェーズ」や「新規チャレンジ」に適しています。一方、助成金は既存の人材や雇用体制の改善に対して支給されやすく、「安定した経営基盤の強化」や「職場環境の整備」に向いています。

そのため、「これから新しい取り組みを始めたい」という場合は補助金が、「既存の従業員の定着や待遇改善を図りたい」場合は助成金が適しているといえるでしょう。

制度ごとの原資と支給目的を理解することで、自社にとって最も効果的な支援策を見つけやすくなります。

補助金・助成金制度が来年も継続するかを判断する4つの基準

① 政策目的の継続性

補助金や助成金は、国や自治体が掲げる政策目的に基づいて設計されています。そのため、制度の継続可否は「その政策自体が続くかどうか」が大きな判断材料となります。

たとえば、「地域経済の活性化」や「中小企業のDX(デジタル化)」といったテーマが政府の中長期政策に含まれている場合、その分野に関する補助金制度は数年単位で継続されることが多いです。逆に、短期的な景気対策や一時的な支援が目的の制度は、翌年度に終了する可能性が高くなります。

制度の背景にある政策の方向性を把握することで、来年も続く可能性があるかどうかをある程度予測できます。

② 予算編成と政府の重点方針

補助金・助成金は、毎年の予算編成に基づいて設計されます。つまり、次年度の政府予算案や経済対策の中にその制度が含まれているかどうかを確認することで、継続の見込みが見えてきます。

特に、年末から年度末(12月〜3月)にかけては、政府が「次年度の重点政策」や「予算の概要」を発表する時期です。この時期に閣議決定される資料や、経済産業省・厚生労働省などの公式発表をチェックしておくと、補助金制度の継続の有無や方向性が早期に把握できます。

また、補正予算が組まれた場合には、制度が突発的に延長・拡充されるケースもあるため、国会の動きにも注意が必要です。


③ 各制度の事業期間や終了予定日

制度ごとに「何年度まで実施されるか」があらかじめ決められているケースがあります。公募要領や事業概要に、「本補助金は2026年度末まで実施予定」といった記載がある場合は、その期間内であれば継続が見込まれると考えられます。

また、「年度ごとの募集」とされている場合でも、過去の公募実績が連続している場合は継続性が高いと判断できます。たとえば「ものづくり補助金」は10年以上継続して公募されており、制度名や要件が変わりながらも制度自体は継続しています。

ただし、期間が明記されていない場合や「予算がなくなり次第終了」とされている制度では、継続性は低くなる傾向があります。


④ 過去の制度継続傾向から読み解く

過去の制度の履歴をたどることで、補助金・助成金の継続傾向を見極めることも可能です。たとえば、「小規模事業者持続化補助金」は、複数年にわたり定期的に募集されており、採択者数も多く、地域の商工会議所等と連携している点から、安定的な継続が期待される制度です。

一方で、災害対策や感染症対応など、特定の社会情勢を背景とした補助金制度は、一定期間で終了するケースが大半です。制度名に「緊急」「特例」「臨時」といった文言が含まれている場合も、単年度で終わる可能性が高くなります。

このように、制度の過去の動きを知ることで、「来年度も使えるか?」を判断する材料になります。

制度の廃止・新設が行われるタイミングと見極め方

制度改定のタイミングはいつ?

補助金や助成金の多くは、「年度単位」で運用されています。日本の行政年度は4月から始まり翌年3月で終了するため、制度の新設・改定・廃止が発表されるのは、主に1月から3月の間が多くなります。

この時期には、各省庁が翌年度の予算案や事業方針を発表するほか、商工会議所や業界団体なども公募スケジュールを案内し始めます。また、政府の公式発表だけでなく、「中小企業庁」や「厚生労働省」のニュースリリース、各自治体のホームページなどをチェックしておくと、制度変更の兆候を早めにつかむことができます。

とくに継続が見込まれている制度であっても、要件や補助率が見直されるケースは少なくありません。前年度と同じ感覚で申請を進めようとすると、条件変更を見落としてしまう可能性もあるため、毎年の情報確認は必須です。


公募開始前に準備しておくべきこと

制度が改定される可能性があるとはいえ、多くの補助金・助成金は前年の流れを引き継ぐ形で運用されることが多いです。そのため、公募開始を待ってから動き始めるのではなく、早めに準備を進めることが申請成功のカギとなります。

具体的には、次のような準備が有効です:

  • 過去の公募要領や申請様式の確認
  • 申請予定の事業に関する計画書の作成
  • 必要となる見積書や証明書類の手配
  • 経費区分や事業期間などの理解

特に人気のある補助金は、募集開始直後に枠が埋まる場合や、申請期間が短期間に限定される場合もあるため、「いつでも出せる状態」にしておくことが大切です。


見落としがちな「事後報告型制度」の注意点

補助金や助成金には、大きく分けて「事前申請型」と「事後報告型」があります。事前申請型は、公募に対して申請し、採択されてから事業をスタートしますが、事後報告型はすでに行った取り組みに対して申請する形式です。

特に地方自治体や業界団体が実施する助成金には、こうした事後報告型が見られます。しかし、このタイプの制度は「実施したけど申請を忘れていた」「申請期間が終わっていた」ということが起こりやすいため注意が必要です。

また、事後報告型の場合も、事前に対象経費や必要書類が決まっているため、準備をしていないと要件を満たせず不支給になることもあります。「後で出せばいい」と思わず、あらかじめ制度の内容を確認しておくことが重要です。

最新の補助金・助成金情報を継続的に把握する方法

チェックすべき公式サイト・ポータル

補助金や助成金の情報は、発表と同時に公開されることが多いため、信頼できる公式サイトを定期的に確認することが情報収集の基本です。

代表的なチェック先としては、次のようなサイトがあります:

  • ミラサポplus(中小企業庁):中小企業向け支援制度を幅広く掲載しており、カテゴリ別・都道府県別に検索可能。
  • jGrants(デジタル申請ポータル):申請受付・電子申請が可能な補助金情報が集約されている。
  • 厚生労働省 事業主向け支援情報:助成金に関する最新の告知や要件変更が随時更新される。
  • 地方自治体の公式ホームページ:市区町村単位で独自の補助金や助成制度を実施している場合がある。

定期的にこれらのサイトをブックマークし、月に1〜2回は更新情報を確認するだけでも、タイミングを逃さず申請のチャンスをつかめます。


地方自治体の補助制度も見逃さない

国の補助金に注目が集まりがちですが、地方自治体が独自に提供している支援制度も重要な選択肢です。特に、事業所を構える地域に密着した制度は、対象条件が緩やかで、予算規模も比較的利用しやすいものが多い傾向にあります。

たとえば、商店街活性化、空き店舗対策、小規模改装支援など、地域課題に直結した助成金が存在します。これらは、市区町村の公式サイトや商工会議所、地域の中小企業支援センターなどが発信しているケースが多く、地元の広報紙や行政のメールマガジンに登録しておくことも情報収集の有効手段です。

地域によっては、地元の金融機関が補助金セミナーを主催することもあるため、積極的に情報にアクセスする姿勢が重要です。


専門家や支援機関を活用するメリット

補助金・助成金の制度は年々増加・複雑化しており、事業者がすべてを把握するのは困難になっています。そこで有効なのが、専門家や支援機関の活用です。

中小企業診断士や税理士、行政書士といった専門家は、制度の最新情報に精通しているだけでなく、申請書類の作成や実績報告のサポートも行ってくれます。費用がかかるケースもありますが、申請の成功率を高め、事務負担を軽減できる点で大きな価値があります。

また、各地域には「よろず支援拠点」や「商工会議所」「中小企業団体中央会」といった無料相談窓口があり、補助金に関する情報提供や書類チェックなども受けられます。自社に合った制度を見つけたい場合は、早い段階で相談しておくことが成功の近道です。

まとめ|原資の理解と継続性の判断で賢く制度を活用しよう

原資の把握が制度選びの第一歩

補助金や助成金は、制度の目的や仕組みを理解することで、より効果的に活用できます。その第一歩として重要なのが「原資の理解」です。
税金を財源とする補助金は、新しい取り組みや社会的インパクトが重視される傾向があり、競争的な審査を通じて選ばれます。一方、雇用保険を財源とする助成金は、一定の条件を満たせば比較的確実に受け取れる支援制度です。自社の状況に合わせて、どちらの制度が適しているかを選ぶ際の指標として、原資の違いは大きなヒントになります。


継続の可能性を読み解く視点を持とう

「今年の制度が来年もあるとは限らない」――これは、補助金・助成金活用において避けて通れない事実です。しかし、政策目的や予算方針、事業期間の明記、制度の過去の傾向といった視点を持つことで、継続の可能性をある程度読み解くことができます。

単年度の支援で終わってしまう制度もありますが、反対に、何年にもわたって実施されている制度も存在します。情報を鵜呑みにせず、自ら調べて判断する視点を持つことが、賢い活用につながります。


情報収集と申請のタイミングが成功の鍵

補助金・助成金を活用するには、情報収集と準備の早さが大きな鍵を握ります。制度の公募が始まってから動き出すのでは、準備不足で申請を断念せざるを得ないケースも少なくありません。

常に最新の情報に目を配り、予算案や制度改定の動きを追うこと。そして、事業計画書や必要書類を事前に整えておくことが、採択への近道です。さらに、専門家や支援機関をうまく活用することで、手間を減らしつつ成功率を高めることが可能になります。

補助金・助成金は「知っている人が得をする制度」です。正しく理解し、的確な判断と準備を行えば、経営を加速させる強力なツールになります。今後も変化していく制度の流れをつかみながら、賢く活用していきましょう。

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