最低賃金は今年いくら上がる?施術所が確認したい引上げ幅と発効日、使える助成金【令和8年度】
ブログ監修者
行政書士/医療経営士3級
棚橋 和宏
(たなはし かずひろ)
emio株式会社 補助金・助成金情報担当
笑みを行政書士事務所 行政書士
【保有資格】
(令和8年7月15日登録)
大手リハビリ機器メーカーで7年半、医療機器コンサルタント会社で4年勤務。現在はemio株式会社にて、接骨院・整骨院・鍼灸院向けの医療機器導入、補助金・助成金情報の発信、設備投資に関する相談対応を行っています。
令和8年7月15日付で行政書士登録。笑みを行政書士事務所を開設し、補助金申請書類の作成支援、許認可に関する相談、事業者向けの書類作成支援にも対応しています。
本ブログでは、施術所業界の現場感と行政書士としての知見をもとに、補助金・助成金、設備導入、Web集客、AI活用などに関する情報をわかりやすくお届けします。
令和8年度の地域別最低賃金は、改定後の全国加重平均が1,177円となり、前年度の1,121円から56円の引上げとなりました。発効は令和8年10月1日から12月2日までの間に、都道府県ごとに順次行われる予定です。スタッフを雇用している施術所にとっては、発効日を過ぎた時点で時間額が基準を下回っていないかを確認する必要があります。本記事では、整骨院・鍼灸院・整体院などの院長やスタッフに向けて、引上げ幅と発効日の確認のしかた、賃金計算で見落としやすい点、そして賃上げに使える助成金の時期の考え方を、厚生労働省の一次情報をもとに整理します。あらかじめお伝えすると、賃上げ支援の代表格である業務改善助成金は最低賃金の発効日の前日までが申請期限とされているため、発効を見てから動くと今年度の申請には間に合いません。本記事では来年度に向けた準備のしかたまで含めて整理します(本記事の内容は2026年9月27日時点)。
令和8年度の最低賃金はどれだけ上がるのか

まず全体像です。最低賃金は国が一律に決めるのではなく、国が示す「目安」をもとに、各都道府県の審議会が金額を決める仕組みになっています。
全国加重平均は1,177円、引上げ額は56円
厚生労働省の公表によると、全47都道府県で改定額の答申が出そろい、改定後の全国加重平均額は1,177円となりました。前年度の全国加重平均額は1,121円で、引上げ額は56円です。
これは全国を加重平均した数値であり、実際に自院へ適用されるのは事業場が所在する都道府県の金額です。平均額だけを見て「自院も56円上がる」と考えると、金額を取り違えるおそれがあります。
引上げ率は目安の段階で4.9%
引上げの水準を率で見ると、国の審議会が示した目安の段階では引上げ率4.9%で、前年度の6.3%より低い水準でした。目安の全国加重平均額は1,176円、引上げ額の目安は55円でした。
実際の答申の結果は、この目安をやや上回る56円の引上げ(1,121円から1,177円へ)となりました。目安はあくまで参考として示されるもので、最終的な金額は各都道府県の審議会が地域の実情を踏まえて決めます。
目安はAランク54円・Bランク56円・Cランク56円
目安は、都道府県をいくつかのランクに分けて示されます。令和8年度は、Aランク(6都府県)が54円、Bランク(28道府県)が56円、Cランク(13県)が56円とされました。
例えば、都市部を含むAランクの目安額が54円で、それ以外のランクより低く設定されています。これは、地域間の金額差を縮めていく方向で調整が続いていることの表れといえます。ただしランクは目安を示すための区分であり、ランクが同じでも最終的な金額や引上げ額は都道府県ごとに異なります。
都道府県ごとの引上げ幅と発効日を確認する

ここが実務でもっとも大事な部分です。金額も、いつから上がるのかも、都道府県ごとに違います。
引上げ額は54円から65円まで分かれた
答申の結果、引上げ額は47都道府県で54円から65円の範囲に分かれました。内訳は次のとおりです。
| 引上げ額 | 該当数 |
|---|---|
| 65円 | 1県 |
| 64円 | 1県 |
| 63円 | 2県 |
| 62円 | 2県 |
| 61円 | 4県 |
| 60円 | 4県 |
| 59円 | 5県 |
| 58円 | 4府県 |
| 57円 | 7県 |
| 56円 | 11道県 |
| 55円 | 3県 |
| 54円 | 3都府県 |
このように、同じ年度の改定でも引上げ額には10円以上の開きがあります。自院の所在地がどこに当たるかによって、賃金への影響の大きさは変わります。
最高額は1,280円、最低額は1,085円
改定後の金額は、最高額が1,280円、最低額が1,085円となりました。最低額は最高額の84.8%で、前年度の83.4%から比率が上がっています。つまり、地域による金額差は縮む方向に動いています。
このことは、地方で運営している施術所にとっては、引上げ額が相対的に大きくなりやすいことを意味します。人件費の見通しを立てるときは、全国平均ではなく自院の都道府県の金額で計算することが欠かせません。
発効日は10月1日から12月2日まで順次
改定後の金額は、令和8年10月1日から12月2日までの間に順次発効される予定です。10月1日に一斉に上がるわけではありません。
例えば東京都では、東京労働局の公表によると最低賃金が1,280円となり、前回の1,226円から54円の引上げで、発効日は令和8年10月1日とされています。一方で、発効日が11月以降になる都道府県もあります。発効日より前の期間について、改定後の金額で支払う義務が生じるわけではありませんが、発効日を過ぎた分については改定後の金額が適用されます。
自院の都道府県の額と発効日をどう確認するか
正確な金額と発効日は、厚生労働省が公表する地域別最低賃金の一覧、または事業場を所管する都道府県労働局のページで確認できます。各労働局は改定額と発効日を個別に公表しています。
金額と発効日は、賃金計算に直接影響します。院内で共有する際は、報道や要約ではなく、所管の労働局が公表している数値を根拠として押さえておくことが大切です。
施術所が賃金計算で確認しておきたいこと

金額を確認したら、次は自院の賃金が基準を満たしているかの点検です。ここで見落としが起きやすい点を整理します。
月給・日給も時間額に換算して比べる
最低賃金は時間額で定められているため、時間給のスタッフだけの話ではありません。月給制や日給制で支払っている場合も、所定労働時間で割って時間額に換算し、最低賃金額と比べる必要があります。
例えば、月給制の受付スタッフや、日給制で勤務している施術スタッフがいる場合、それぞれの所定労働時間をもとに時間額を出して確認します。所定労働時間の把握が曖昧なままでは、この比較そのものができません。
最低賃金に算入しない賃金がある
比較のときに使うのは、支払っている賃金の総額ではありません。厚生労働省の説明では、最低賃金の計算に算入しない賃金として、臨時に支払われる賃金(結婚手当など)、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)、所定労働時間を超える労働に対する賃金(時間外割増賃金など)、所定労働日以外の労働に対する賃金(休日割増賃金など)、午後10時から午前5時までの深夜労働について通常の賃金額を超える部分、そして精皆勤手当・通勤手当・家族手当が挙げられています。
ここを取り違えると、実際には基準を下回っているのに「通勤手当を含めれば足りている」と誤って判断してしまうおそれがあります。手当を含めた総額ではなく、算入できる賃金だけで比較するという点を押さえておくことが大切です。
パート・アルバイトも対象になる
最低賃金は、雇用形態にかかわらず適用されます。パートタイムやアルバイトで勤務しているスタッフも対象です。施術所では、受付や施術助手を短時間勤務で採用しているケースが多く、こうした方の時間額が基準を下回っていないかの確認が必要になります。
なお、業種や職種によっては地域別最低賃金とは別に特定最低賃金が定められている場合があり、両方が適用されるときは高い方の金額が基準になります。自院に関係する定めがあるかは、所管の労働局で確認できます。
発効日をまたぐ月の計算に注意
発効日が月初でない都道府県では、賃金計算期間の途中で適用される金額が変わります。この場合、発効日の前後で時間額を分けて計算する必要が生じます。
給与計算を院内で行っている場合は、発効日を事前にカレンダーに入れ、その月だけ計算方法が変わることをあらかじめ共有しておくと、締め日直前の混乱を避けやすくなります。
引上げに対応するときの注意点

金額を合わせるだけでは終わらない部分があります。制度面と経営面の両方で、あらかじめ押さえておきたい点を挙げます。
下回った場合は罰則が定められている
地域別最低賃金額以上の賃金を支払わなかった場合、最低賃金法第40条により50万円以下の罰金に処せられることがあるとされています。特定最低賃金額以上の賃金を支払わなかった場合は、労働基準法第120条により30万円以下の罰金に処せられることがあるとされています。
これは「うっかり」でも起こり得るものです。発効日を過ぎてから気づくのではなく、発効日より前に点検を終えておくことが安全です。
賃金規程・雇用契約書・賃金台帳を揃えておく
時間額を引き上げたら、雇用契約書や賃金規程に記載している金額との整合も確認します。実際の支給額だけを変えて書面が古いままだと、後から確認したときに食い違いが生じます。
また、賃金台帳や勤務記録が整っていないと、基準を満たしているかの確認自体が難しくなります。こうした書類は、後述する助成金の申請でも提出や確認の対象になり得るため、日頃から整理しておくと二重に役立ちます。
既存スタッフとの賃金バランスも動く
最低賃金に合わせて下限を引き上げると、もともとその水準より少し上で働いていたスタッフとの差が縮まります。勤続年数の長いスタッフの時間額が、新しく入った方とほとんど変わらない状態になることもあります。
この点を放置すると、金額としては適法でも、院内の納得感が下がるおそれがあります。下限を合わせるだけでなく、全体の賃金の並びをどう調整するかまで含めて考えることが大切です。
人員配置と料金の見直しは早めに検討する
人件費が上がる分をどう吸収するかは、経営判断の領域です。シフトの組み方を見直す、予約の受け方を整えて対応できる人数を増やす、自費メニューの価格を見直すなど、取り得る手はいくつかあります。
いずれも急いで決めるとうまくいきにくいため、発効日が分かった段階で選択肢を並べ、優先順位をつけて進めることが望ましいといえます。
賃上げに使える助成金と、来年度に向けた準備

賃金の引上げに取り組む事業者を支援する制度もあります。ただし申請できる時期には制度側の締切があり、最低賃金の発効を見てから動き出すと間に合わないことがあります。 ここは時期の話として押さえておきたい部分です。
業務改善助成金は「発効日の前日」までが申請期限
事業場内で最も低い賃金の引上げと、生産性向上につながる設備投資などをあわせて行う場合に活用を検討できる助成金として、厚生労働省の業務改善助成金があります。
注意したいのは申請期限です。厚生労働省の業務改善助成金のページ(2026年9月27日時点)によると、令和8年度の交付申請の受付は令和8年9月1日に始まり、申請期限は「申請事業場の都道府県において適用される地域別最低賃金の発効日の前日」または「令和8年11月30日」のいずれか早い日とされています。つまり、最低賃金が上がるタイミングで申請の窓が閉じる設計になっています。
例えば発効日が10月1日の都道府県であれば、申請期限は9月30日です。最低賃金が上がってから「負担が増えたので助成金を使おう」と動き出しても、その年度の申請には間に合わないことになります。 自院の都道府県の発効日と申請期限は、所管の労働局で確認できます。
事業完了までの期間も年度内に収める必要がある
仮に申請が間に合ったとしても、そのあとの日程も詰まっています。厚生労働省の業務改善助成金のページでは、事業完了期限は交付決定を受けた年度の1月31日とされ、設備の納品・支払いの完了・賃金の引上げをこの日までに実施する必要があるとされています。やむを得ない理由がある場合は、理由書の提出により3月31日まで延長できるとされています。
つまりこの助成金は、「交付決定を待ってから設備を入れ、実績報告まで年度内に終える」流れを前提としています。設備の選定や見積もりが固まっていない段階から駆け込みで申請しても、日程を組み切れないおそれがあります。
今年度に間に合わない場合は、来年度に向けて準備する
すでに発効日が近い、あるいは過ぎている場合は、今年度の枠を追いかけるのではなく、来年度の活用を前提に準備を進めるほうが現実的です。 準備は申請期間の前にしかできないことが多く、時間をかけた分がそのまま申請の質になります。
今の時期からでも進められることとして、例えば次のような整理が挙げられます。事業場内で最も低い賃金がいくらかを把握しておくこと、賃金台帳や就業規則を実態と合った状態にしておくこと、導入したい設備を洗い出して早めに見積もりを取っておくこと、そして雇用保険の加入状況を確認しておくことです。
雇用保険については、業務改善助成金の要件が改定されており、注意すべき変更点があります。詳しくは別記事「業務改善助成金は使えなくなった?雇用保険加入が必須になった影響を解説」で整理していますので、来年度に向けて検討するなら先に目を通しておくことをおすすめします。
なお、受付開始日・申請期限・事業完了期限・要件は年度ごとに改定されます。来年度の案内が公表された時点で、必ず最新の情報を一次情報で確認してください。
公募時期が後の補助金なら今年度も間に合う場合がある
時期の面で今年度も検討できるのが、公募の時期が後に設定されている補助金です。販路開拓を支援する小規模事業者持続化補助金は、次回公募の受付開始が11月からと案内されており、今から準備すれば申請に間に合う可能性があります。
この制度には賃金引上げに関する特例が設けられている場合があり、要件を満たすと補助の上限が引き上げられることがあります。制度の対象や使い道の基本は、別記事「小規模事業者持続化補助金とは?施術所が知っておきたい対象と使い道」で整理しています。特例の内容や金額は公募回ごとに更新されるため、実際に申請する際は必ず最新の公募要領で確認してください。
申請には共通のルールと準備がある
助成金・補助金には、制度をまたいで共通する原則があります。交付決定の前に発注・購入した経費は原則として対象にならないこと、支払い後に交付される後払いが基本であることなどです。賃上げと同時に設備を入れたい場合、この順番を崩すと対象外になりかねません。
必要書類の考え方は「補助金の申請に必要な書類は何が共通している?」、制度の探し方は「施術所が使える補助金・助成金の探し方とは?」でも紹介しています。いずれの制度も要件と審査があり、申請すれば必ず受けられるものではありません。検討するなら、まずは所管の労働局や、商工会・商工会議所などの窓口に早めに相談しておくと進めやすくなります。
まとめ
令和8年度の地域別最低賃金は、改定後の全国加重平均が1,177円となり、前年度の1,121円から56円の引上げとなりました。引上げ額は都道府県ごとに54円から65円まで分かれ、改定後の金額は最高額1,280円、最低額1,085円です。発効は令和8年10月1日から12月2日までの間に順次行われる予定で、10月1日に全国一斉に上がるわけではありません。
施術所として確認したいのは、自院の都道府県の金額と発効日、そして算入できる賃金だけで比較したときに時間額が基準を満たしているかです。月給制・日給制でも時間額に換算して確認し、パートタイムのスタッフも対象に含めます。精皆勤手当・通勤手当・家族手当などは最低賃金の計算に算入しない点に注意が必要です。地域別最低賃金額以上を支払わなかった場合には、最低賃金法第40条により50万円以下の罰金に処せられることがあるとされています。
賃上げの負担に対しては支援制度もありますが、時期に注意が必要です。 業務改善助成金の申請期限は「自院の都道府県の最低賃金の発効日の前日」または「令和8年11月30日」のいずれか早い日とされており、事業完了期限も交付決定を受けた年度の1月31日(やむを得ない理由がある場合は理由書の提出により3月31日まで延長)とされています(厚生労働省・業務改善助成金、2026年9月27日時点)。最低賃金が上がってから動き出すと、その年度の申請には間に合わないことになります。 すでに発効日が近い、あるいは過ぎている場合は、今年度の枠を追うのではなく、事業場内最低賃金の把握や賃金台帳・就業規則の整備、設備の見積もり取得、雇用保険の加入状況の確認といった準備を進め、来年度の活用に備えるほうが現実的です。
一方で、公募時期が後に設定されている制度なら今年度も検討できます。小規模事業者持続化補助金は次回公募の受付開始が11月からと案内されており、賃金引上げに関する特例が設けられている場合もあります。いずれの制度も要件と審査があり、申請すれば必ず受けられるものではありません。金額・要件・発効日・公募内容は改定されるため、実際に対応する際は、所管の労働局や各制度の最新の公募要領を一次情報として確認することが欠かせません。まずは発効日までに自院の時間額を点検し、そのうえで使える制度と時期を確かめる順番で進めると、落ち着いて対応しやすくなるでしょう。



